【学習センター機関誌から】「トクホの話」

奈良学習センター 客員教授 菊﨑 泰枝

最近、テレビのコマーシャルやインターネット、新聞の広告で「トクホ」という言葉をよく見聞きするようになりました。
皆さんも一日に一度くらいはその言葉に触れているのではないかと思います。

「トクホ」の正式な名称は「特定保健用食品」といい、「食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示を許可されたものをいう」と定義されています。
いわゆる健康食品とは異なり、トクホが市場に出るまでには、科学的根拠に基づく基礎的試験やヒト臨床試験での効果および安全性に関する専門家委員会の審議、評価を経て、最終的に消費者庁の認可を得なければなりません。


2021年10月時点で、1071品目のトクホが承認されています。その内訳をみると、保健機能として「おなかの調子を整える」と表示されたもの、「血糖値が気になり始めた方に」と表示されたものが、ともに30%近く上位を占めています。
血中脂質・体脂肪、コレステロール、血圧に関わる保健機能がそれらに続いています。


「トクホ」が誕生したのは1991年です。1950年代、日本は戦後の食糧難の時代から脱却し、高度経済成長に後押しされてしだいに生活が豊かになりました。
食生活においては欧風化、外食化、ファストフード化が相まって、米の消費の減少、畜肉、乳製品、油脂の消費の増加など食生活が大きく変化しました。


一方で、家庭製品の電化、自動車、電車、エスカレーターなど移動手段の発達などで日常の運動量が減少しました。
その結果、豊かで便利になった生活の代償として、いわゆる「生活習慣病」の増大を招くことになりました。
そのような社会背景から、生活習慣病の治療に注力するよりも生活習慣病にならないようにする、すなわち「未病」により生活習慣病を克服するという発想が生まれました。

食品には生命維持の根幹を担う栄養機能(一次機能)、おいしさに関わる機能(二次機能)がありますが、「医食同源」という言葉があるように「食」が健康維持に深く関わっていることは古くから知られていました。
それを食品の第三の機能(健康維持機能)と位置づけ、「未病」に貢献するべく系統的な解析研究が、世界に先駆けて日本で始まりました。

その成果が「トクホ」の誕生に繋がりました。
食品の三次機能に関する研究は、現在も多くの研究者により精力的に行われております。
例えば、食物繊維は腸内細菌叢のバランスを良好に保ち「おなかの調子を整える」働きがあります。
最近の研究では、腸内細菌叢が免疫力や認知症とも関わっていることが判明し、腸内細菌叢のバランスを良好に保つことが、便通を整えて大腸がんを予防するだけでなく、様々な疾病の予防に重要な役割を果たし得ることが明らかになりつつあります。

食品の機能性は、まだまだ多くの可能性を秘めている興味深い研究分野と言えます。
トクホの機能成分はもともと食品に含まれる成分ですから、毎日、一般食品から摂取できればそれに越したことはありません。
トクホ商品のパッケージには「バランスのよい食事を心がけましょう」と基本は健全な食生活がベースになっていることを謳っています。
あくまで日常バランスのよい食生活を心がけた上で、人生100年といわれる時代、健康で過ごせる時間をできるだけ長く保つために、トクホを上手に活用したいものです。


(奈良学習センター 機関誌「芳藻」第113号より)



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公開日 2022-02-18  最終更新日 2022-04-13

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