【学習センター機関誌から】「働き方改革」は「生き方改革」に通じる

 香川学習センター所長 有馬 道久

2018年に「働き方改革関連法」が成立した頃 から、働き方改革という言葉をよく耳にするように なりました。例えば、小・中学校で、毎年開催していた行事を隔年開催にする、2つの会議を 1つにまとめる、あるいは、会議資料を事前に配り会議の時間を短縮するといった仕事の精選や効率化が図られています。それによって、本来時間をかけたい仕事に時間を回して生産性を上げたり、長時間労働を是正したりすることが可能となり、結果として働く人の身体的、精神的健康が保たれるのだと理解していました。

しかし、働き方改革の背景には少子高齢化に伴う労働力不足とそれを前提にした「一億総活躍社会の実現」というもっと大きな問題と目的があることを放送大学のオンライン授業で学びました。

まず少子化は、我々が思っている以上に急速に進んでおり、厚生労働省が発表したデータによると、2016年の国内出生数が97万7千人と初めて100万人を割って以来、年々減り続け、2019年には86万4千人になっています。この減り方は政府の予測よりも2年も早いペースです。


一方、高齢化について最近は、「人生100年時代」と言われるようになりました。これは、イギリスの組織論学者リンダ・グラットン氏が提唱したもので、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来するという意味だそうです。

このまま少子高齢化が進むと、2030年には、 高齢者の割合が日本の人口の1/3にまで上昇するそうです。そうなると、生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)も減少することになります。それが労働力不足の基本的な構造です。

そこで政府は、若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会、一人ひとりが、個性と多様性を尊重され、家庭で、地域で、職場で、それぞれの希望がかない、それぞれの能力を発揮でき、それぞれが生きがいを感じることができる社会、つまり、一億総活躍社会の実現をめざすことになりました。 加えて、100歳まで生きることが一般化する社 会では、これまで一般的だった「20年学び、40年働き、20年休む」という「教育-仕事-引退」の3段階で考える人生設計の見直しが必要になります。年齢による区切りがなくなり、学び直しや転 職、長期休暇の取得など人生の選択肢が多様化する と予想されています。このことが、キャリア形成に詳しい武石恵美子氏の言う「働き方改革」は自身の「生き方改革」でもあるという意味です。


そこで注目されるのがリカレント教育です。これは、スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーン氏が提唱したもので、「職業上必要な知識・技術を修得するために、フルタイムの就学とフルタイムの就職を繰り返すこと」です。しかし、日本では本来の意味のリカレント教育はあまり行われず、働きながら学ぶ場合や心の豊かさや生きがいのために学ぶ場合も含めてより広く使われています。

このような考え方は、まさに放送大学の理念そのものだと言えます。現在、香川学習センターに所属している学生さんの年齢分布をみますと、「10代 から30代が全体の約30%」、「40代と50代で 約30%」、そして、「60歳以上が約30%」といった具合に、どの年代層の方もほぼ同じ人数です。おそらくお一人お一人がキャリアアップやキャリアプランの実現のために、リカレント教育として意欲的に学ばれているのだろうと思います。これからも私たちスタッフは、そうしたニーズを意識しながら、皆様の学びを応援してまいりたいと思います。


香川学習センター機関誌「息吹」第120号より

公開日 2021-06-23  最終更新日 2022-11-08

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