【学習センター機関誌から】学問における似て非なるもの

福岡学習センター客員教授
九州大学大学院人間環境学研究院 准教授
池田浩
(専門:社会心理学、産業・組織心理学)

以前、関東や関西の大学に所属する経営学の先生方から合同ゼミに参加しないかと誘いを受けました。なぜ経営学と合同ゼミをすることになったかというと、彼らの専門が経営学でも組織の人を扱う「組織行動論」という分野であり、私の専門である「産業・組織心理学」と近い分野だからです。 

なぜ同じような分野が存在するかというと、その源流は米国における戦後の高等教育にあります。米国では高等教育として多くの大学でビジネススクール(MBA)が設置されました。MBAでは、実践的な科目として経営戦略やマーケティングなどがありますが、これに加え、当時社会科学で重視されていた「行動科学」を組織の問題として取り入れようとして組織行動論という分野が生まれました。そして、その科目担当教員として心理学者が雇用されました。


では経営学と心理学では異なる学問でありながらも、同じような研究やアプローチかといえば大きく異なります。例えば、私の研究テーマであるリーダーシップについて言えば、経営学の立場であれば経営者にインタビューを行うなど質的アプローチをとり、1つひとつの事例を丁寧に紐解こうとします。

一方、心理学は心をいかに測定して可視化するか、さらに心のメカニズムを解明することを目指しています。そのため、心理学でリーダーシップを研究しようとすれば、多くの集団を対象にリーダーシップの「実験」を行ったり、管理者を対象に「調査」を行います。こうしてみると、同じ現象(テーマ)を対象としていても、学問の違いによって見る視点や方法論が違うというのは興味深いと思います。


合同ゼミに話を戻すと、学生にとって他大学の学生から刺激を受けるだけでなく、学問の違いに触れることで改めて心理学の学問的特徴や位置づけに気づかされたのではないでしょうか。放送大学の学生の皆さんも、同じテーマであっても学問の違いに注目していただければ、さらに学問の面白さを感じていただけるのではないかと思います。


(福岡学習センター機関誌『おっしょい』48号,2020年1月発行)

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公開日 2022-02-18  最終更新日 2022-02-18

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