【学習センター機関誌から】 ― 絆 ―

福岡学習センター所長 安河内 朗

昔は地域ごとに寄り合いや子供会があり、また七夕など四季を通じたお祭り、あるいは地引網や山菜とりなどいろんな行事がありました。またうっかりお米や醤油が足りなくなったときお隣さんに分けてもらったものです。ご近所で子どもが無作法すれば叱られたり、良いことをすればご褒美をもらいました。一方ではプライバシーは丸裸に近くなり、窮屈な思いもしばしばでした。こういったコミュニティ内で人と人とのつながりができ、互恵的精神が育まれていったと思います。このような絆は対面のコミュニケーションで築かれます。

対面の重要性は、相手の表情や声音やしぐさなどでその人がどういう状態にあるのか、つまり喜んでいるのか機嫌が悪いのか、本能的にある程度細かいところまで読み取ることができることです。相手の情動反応によって自分自身に生じる情動反応から共感という働きが生まれます。共感はペットの犬や猫にもあり、ペットと主人の間でも双方向に共感が働き、お互いが相手の喜怒哀楽をある程度理解できるのは経験的にもわかるとおりです。


このような共感によって人と人とのつながりができ、互恵的な社会を促してきました。こうしてできた仲間の存在が心身のストレスを軽減することも知られています。これは社会的緩衝作用と呼ばれ、同様の現象が動物実験でも確かめられています。オキシトシンというホルモンが親子の絆や他者とのつながりに重要な役割を果たしています。またこのホルモンは、ストレスを感じたときに生じる視床下部―下垂体―副腎系の活性を抑制する働きもあり、社会的緩衝作用に一役買っています。

さて、現在の日本社会はどうでしょう。昔のような隣組や子供会はなく、お隣さんの顔も知らない集合住宅が多くなり、また個人情報の保護によりプライバシーは社会的に堅く守られるようになりました。さらにネット社会の普及はコミュニケーションのかたちを大きく変えています。今回のコロナ禍はネット社会の深化に拍車をかけ、対面の機会を大きく減じることとなりました。ポストコロナもこの傾向は続くでしょう。


しかし、インターネットは時間と空間を問わず、言語や文化を超えて一度に大勢の人と対話できるというかつてない特徴をもっています。確かなネット媒体を選び、web映像や音声などの感覚刺激を駆使して新たな絆のあり方を探っていくことが重要でしょう。人は大なり小なりさまざまなストレスを抱えて生きていかねばなりません。しかし、いろんな繋がりをもって生きていくことで、人生をより楽しく内容あるものにしていけると思います。社会性動物としての進化の道筋を踏まえて、対面と併せてネットによる新たな絆づくりの文化をつくっていくことが、より良い仲間や社会を築くために重要だと思うこのごろです。 皆さんの新たなスタートを祝福するとともに、新たな絆づくりも含めて大いにチャレンジされることを期待しています。福岡学習センターはいつでも皆さんのご期待に応えられるようお待ちしております。


(福岡学習センター機関誌「おっしょい 第53号 2021年4月発行」より)

機関誌『おっしょい』バックナンバーはこちらから→https://www.sc.ouj.ac.jp/center/fukuoka/about/magazine.html

公開日 2021-07-19  最終更新日 2022-08-09

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