【学習センター機関誌から】 ― 水道の話 ―

和歌山学習センター客員教員
和歌山大学教授 江種 伸之

私たちの生活に一番身近な水と言えば‘‘水道水”でしょう。毎日あたり前のように水道水を使っていると思います。この水道水、正確に言えば“水道事業”が大きな曲がり角にさしかかっていることを知っていますか?

現在の水道事業はいくつもの課題を抱えています。一つ目は、人口減少に伴う自治体の財政難です。水道事業は基本的には自治体単位で行われています。そして、水道料金収入で事業の運営費をまかなっていますので、人口が減れば料金収入も減り、運営が困難になっていきます。


二つ目は、水道事業に携わる自治体の職員数の減少です。職員数の減少が続くと、水道の技術や経験の継承ができず、運営が困難になっていきます。三つ目は、水道管や浄水場などが老朽化し、更新していかなければならないことです。水道は高度経済成長期に整備が進みましたが、この頃に整備された水道管や浄水場は更新時期にさしかかっています。しかし、財政難と人材不足から、更新は思ったように進んでいません。

これらの課題を解決するために、水道の広域化・民営化が今進められようとしています。広域化とは、自治体毎に行われてきた水道事業を複数の自治体でまとまって行うようにすることです。広域化した後は、施設の統廃合などにより効率化(必要に応じて規模縮小)を目指すことが基本となります。


一方、民営化とは、昔行われた国鉄の民営化(完全民営化)などとは違い、自治体の関与を残すので、官民連携と言ったほうがよいかもしれません。水道事業の一部を民間企業に委託することは以前から行われており、珍しくはありません。今進められようとしている民営化とは、コンセッション方式と呼ばれるものです。コンセッション方式では、施設の所有権は自治体が持ちつつ、運営権を数十年に渡って民間企業に売却します。簡単に言うと、自治体はある程度の関与はするが、水道事業の運営全般を民間企業に任せるということです。

このような水道の広域化・民営化によって、水道事業がかかえている課題を解決しようとしていますが、なかなか進んでいないのが実状です。広域化に関しては、自治体間の料金格差、財政状況の格差、施設整備水準の格差などが問題としてあげられています。

民営化(コンセッション方式)に関しては、利益を追求する民間企業が利益を上げる必要のない自治体が運営する場合と同等の水準を維持しようとすると水道料金が上がるのではないか。コスト削減や利益追求のために運営費が減らされて水質が低下するのでないか。自治体の水道職員の減少がさらに進んで自治体から職員と技術が失われて、水道事業に関与できなくなってしまうのではないかなど、色々指摘されています。 日本の水道は大きな曲がり角にきています。人口減少が進む日本で、これまでと同じように水道事業を行っていけるとは思えません。この解決策として、水道の広域化・民営化が進められようとしています。そこで、皆さんが住んでいる地域の水道にとって理想的な広域化・民営化(官民連携)とはどのようなものであるか、その是非も含めて今から一人一人が真剣に考えていきましょう。


(和歌山学習センター機関誌「てまり91号」より)

機関誌『てまり』バックナンバーはこちらから→https://www.sc.ouj.ac.jp/center/wakayama/about/magazine.html

公開日 2021-07-19  最終更新日 2021-07-19

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