【学習センター機関誌から】国籍を超えた個々人の強い結びつきが不安定な国家間関係を支え、未来を創る

北海道学習センター 
客員教員  張 博一

昨年4 月より放送大学北海道学習センターの客員教員をつとめております。本務校は小樽商科大学商学部企業法学科、専門は国際法です。

「てんとう虫」には今回が初投稿となりますので、自己紹介を中心にお話をさせていただこうと思います。

私は中国東北部の吉林省長春市の出身です。長春は札幌とほぼ同じ緯度で、「寒い」という点では共通していますが、長春は内陸部にあるため冬の最低気温は-20℃以下にもなりますが、あまり雪は降りません。

私が10歳のときに、母が岡山大学で修士課程に在籍していたため、「娘に東京ディズニーランドを見せたい」という母の願いから、当初は1年間だけの予定で日本に来ましたが、あれからいつの間にか28年の月日が流れました。

日本に来た当初は、日本語が全く話せず、教育ママであった母から課された課題が「辞書の暗記」と「友達への質問攻め」でした。

小学校4年生であった私は「あいさつ」「あめ」「アメリカ」と辞書の順番で単語を覚えていき、また帰り道ではいつも道端あるものを指し「これは何ですか」との質問を繰り返し、友達が「これは電信柱です」などといつも親切に教えてくれました。

日本に来て一年が経った頃、小学校創立100周年の式典で全校生徒の前でスピーチをすることになり、発音がおかしかった私のスピーチを笑った男子たちを女子たちが怒り、ホームルームの議題になったことは今でも覚えています。

今となってはビタースウィートな思い出ですが、このようなバックグランドをもつことから、自分とは異なる社会的、言語的、文化的背景をもつ他者や他国の多様な価値観を認め合い、対等な立場でコミュニケーションをはかることの大切さを実感しています。

国際法上、「国籍」とは個人と国家を結ぶ法的紐帯とされ、海外でトラブルに巻き込まれた際には領事に援助を求めたり、滞在国で法的救済が得られない場合には国籍国による外交的保護権の発動など、「国籍」は重要な意味を持ちます。

他方で、日常生活において、私は「国籍」自体に大きな意味を感じていません。私は日頃からよく「日本人っぽいね」と言われたり、ときに「やっぱり中国人だね」と言われることがあります。また、アメリカではよく「アジア人は…」とさらに大きな括りで見られることがよくありました。

それぞれの国が持つ文化的・社会的特長がその国の人々の思考や行動方式に影響を与えることは事実だとしても、「国籍」というフィルターを通して相手をみるほど無意味なことはないと感じています。

昨今、国家間関係が国民感情に容易に影響を及ぼすことが多く感じられる一方で、それ以上に国籍を超えた個々人の強い結びつきが不安定な国家間関係を支え、未来を創ると確信しています。

私自身の経験を踏まえて、面接授業、基礎ゼミ、アカデミック・カフェなど様々な場で、放送大学の幅広い年齢層の学生たちと交流し、学び、ともに成長していきたいと思います。


北海道学習センター 「てんとう虫」第127号より


バックナンバーはこちらから→https://www.sc.ouj.ac.jp/center/hokkaido/about/magazine.html

 

公開日 2022-07-15  最終更新日 2022-07-30

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