【新任所長挨拶】 着任のご挨拶(愛知学習センター所長・根本 二郎)

新・愛知学習センター所長 根本 二郎

愛知学習センター所長_根本二郎

2023年4月から愛知学習センターの所長を務めます根本二郎と申します。

私は計量経済学あるいは経済統計学を専門としています。データを使って経済分析を行う分野ですが、広く言えば企業(公的企業、公的サービス生産者を含む)の生産性分析を主な研究テーマにしてきました。特に、電力業や電気通信事業など公益事業の生産と費用の構造を分析して、産業の規制や自由化といった政策判断に関わる定量的知見を得ることと、そのための方法を開発する研究に携わってきました。最近ではデータサイエンスにも関心があります。データサイエンスは文字通りデータを対象とする科学ですが、データは人文学にも社会科学にも自然科学にも存在し、その形態も数値、テキスト、音声、画像と多様です。分析手法の面でも統計学も情報学も包摂し、分野を越えた新たな共通言語が生まれつつあるように感じます。

私は学部・大学院とも経済学部で学び、教員になってからもずっと経済学部の所属でしたが、研究で大型計算機センター(1990年代の中頃まではPCはパワー不足でした)を利用したり、大手計算機メーカーの研究所の客員研究員になったりと文理融合的な経験もしてきました。文系と理系を分けて考えるのは日本特有とも聞きます。しかし、学び方は人それぞれ適性に合わせたやり方があると思いますので、たとえば高等学校で理数系の科目を学ぶ時間数が人によって違うことは悪いこととは思いません。ただ大学入試科目との関係で、高校でいったん文系か理系かどちらかのコースを選ぶとそれで進学する大学の学部が決まってしまい、後から進路変更するのに相当のコストを要するというのは不自由です。大学の進路選択や進路変更に、もっと多様な選択肢が用意されていることが望ましいと考えます。

そこで放送大学ですが、一人一人の事情と目的および希望に即した自分なりのプログラムを学べるよう、他大学よりもずっと柔軟な履修が可能になっていると思います。年齢、性別、職業、現在に至る学歴などはもとより、どのような人生のプロットを描いている人でも学びたいという思いさえあれば誰でも受け入れることが可能です。もちろん学びたいという動機の背景も多様であって構いませんし、実際、それは人によりさまざまでしょう。教養を身に着けようとする人、必要なスキルを修得しようとする人、資格が必要な人、学位が必要な人、ただ知的好奇心から学問というものに触れたい人、どの動機が尊いわけでも卑しいわけでもありません。成熟した社会における高等教育は、画一的な知識の提供ではなく「求める人に求めるものを」が本来の理想だと思います。

私自身は50年近く前に大学に入学しましたが、比較的早くから研究者を目指しましたので、どちらかといえば専門に集中して勉強しがちでした。今にして思えば、もっと幅広くいろいろな分野を学んでおけばよかったと思います。たとえば、私は文学とは疎遠でした。今からでも内外の文学の名著を読みたいという希望は強く持っています。また最近の進歩著しい自然科学、特に生命科学にも関心を持っています。

これから学習センター長としてみなさんの要望を受け止めつつ、「求める人に求めるものを」の理想に少しでも近づけるよう、微力ながら貢献したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。


愛知学習センター 機関誌「しりあい」第123号(2023年4月発行)より

公開日 2023-05-23  最終更新日 2023-05-23

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