【学習センター機関誌から】私たちの生活の中のAI(人工知能)

渡邊 信一
栃木学習センター 客員教員
宇都宮大学准教授

近年、私たちの身の回りでAI(Artificial Intelligence:人工知能)と呼ばれる技術・機能を耳にすることが多いと思います。AIとはWikipediaから引用すると「言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術」とも言われており、誤解を恐れずに平たく言うと特徴の一つとして、世の中にたくさんあるデータの中から、自分が欲しいデータを抽出する特徴があります。例えばキーワード検索やECサイトでの商品検索などがそれに当たります。また、ナビゲーションシステムの経路検索、路線検索にも活用されています。

次に技術的なからくりについてお話しますと、従来から主に実用化されてきたのは教師あり学習による識別系AI(Discriminative AI)と呼ばれるAIです。これは◯◯という教師データを入力すると△△というデータが出力されるように何回も学習させ覚えさせる仕組みになっています。例えば「赤くて、丸みのある食べ物」は「りんご」です!とAIにひたすら学習させるとAIは「赤くて、丸みのある食べ物はりんごである」と学習します。ところが「りんご」と「トマト」を分類したいとなるとその違いをAIに学習させなければなりません。つまり「赤くて丸いくだもの」は「りんご」、「赤くて丸い野菜」は「トマト」というようにです(※トマトは野菜かくだものかという議論もありますがここでは野菜としています)。さらに「パプリカ」や「梅干し」も識別したいとなるとそれぞれの特徴をAIに学習させます。この学習によって「りんご」、「トマト」、「パプリカ」、「梅干し」を識別するようになります。このようにあらゆる物の特徴を学習させ覚えさせて私たちの生活でAIを活用してきました。

ところが近年では生成AI(Generative AI)の研究が進み実用化され、皆様も耳にするようになってきたと思います。このAIは自らが答えを探し成果物を生み出すのが特徴で教師なし学習とも呼ばれています。AIに質問や要望を伝えると、AIが適切と判断した画像やテキストを出力してくれます。 その成果物が生成AIの出力なのか、人間が創作したものなのかを見分けるAIもあるそうです。

今後、私たちの生活の中でAIは次々に使われ、様々なアドバイス、哲学・思想、芸術、文学の世界で活躍するAIが出てきて新しい生活様式となるかもしれません。それが私たちの生活や人生を豊かにするものであれば良いのですが、悪意を持って利用する人もいるかもしれません。どのように活用・運用するかは私たちの問題でありますが、もしかすると生成AIに問題を投げかけると法律的、倫理的解決策を提案してくれるかもしれません。冗談が現実化しないように、AIは私たちの生活を豊かにしてくれるための、あくまでもツールであることを認識し、私たちとしては高い倫理観や社会性を持った人間社会を構築する必要があると考えます。


栃木学習センター機関誌「とちの実」第130号(2023年10月発行)より

公開日 2023-11-24  最終更新日 2023-11-24

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