【学習センター機関誌から】「いきもの」から学ぶ

戸塚 学
放送大学青森学習センター 客員教員
弘前大学教育学部 教授
(相談分野:健康科学)

この春のスポーツ界は、ワールドベースボールクラッシック(WBC)の話題で持ちきりでした。
最も注目されたのは、もちろん大谷翔平選手。今期もアメリカ・メジャーリーグで圧巻のパフォーマンスを見せてくれています。
その特徴は「二刀流」、まさに野球の申し子であり、「走・攻・守」を高い次元で具現化する選手です。

人間の基礎的な身体能力を表す言葉に「走」「跳」「投」があります。
この「走」「跳」「投」の能力を全て兼ね備えた「いきもの」は、人間の他には見当たりません。さらに、「長寿」という他の「いきもの」が簡単には真似できない特徴をも有しています。

そんな、万能選手のような人間ですが、時折、子どもたちのこんな声を耳にすることがあります。
 「馬やチーターは、どうして速く走れるの?!」
 「白鳥は、どうしてあんなに長い距離を飛べるの?!」
 「蝶の羽は、どうしてあんなに綺麗な色をしているの?!」
だれもが一度は考えたことがある「どうして?!」だと思います。

馬やチーターはどうやって早く走ろう?白鳥はできるだけ楽に長い距離を飛ぶには?
また、蝶もどうしたら綺麗に発色できるのか?常に考えたり、研究したりしていません。
「いきもの」たちは、身体構造や機能などの運動学・生理学的な話は別にして、本能、すなわち先天的に備わっている特性や性質を大事にして、それを生きるために実践しているといったところでしょうか。

近年、バイオミメティクス(英:biomimetics・日本:「生物模倣」)の考え方により、動物の動きの模倣により人間の代わりになるロボットの研究をしたり、昆虫の生態特性や構造を分析して工業的な技術に導入したり、「いきもの」が持つ特徴や性質が、新しい技術の開発やものづくりに活かされています。

一方、機械工学専門の伊藤慎一郎先生は、「生き物の運動形態・推進メカニズムは基本的に自然淘汰され、最適化されている。人間は理性があるがゆえに、本能本来の動きを変えてしまった。」と指摘しています。

昨今、幼小期には基本の動きづくりに、そして中高年期には認知症予防のために、コーディネーショントレーニングが用いられるようになってきました。
「いきもの」の動きの模倣もその一つです。そしてそれは、もともと人間が持っていた能力を思い出したり、蘇らせたりする可能性を秘めていると考えます。

まずは、何かが上達したとか、できない動きができるようになったというより、楽しく巧みに体が動かせたという感覚をもっとも大事にし、時には、子どもたちと一緒に「いきもの」の真似をするコーディネーショントレーニングをして、健康長寿を目指してみてはいかがでしょうか。


青森学習センター・八戸サテライトスペース機関誌「りんごー林檎ー」第115号(2023年7月)より

公開日 2023-11-24  最終更新日 2023-11-24

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