【学習センター機関誌から】学びは新たな挑戦!

北海道学習センター客員教員/北海道教育大学 名誉教授
石塚 博規
(専門:英語教育学)

 

私が中学校と高等学校で英語を学んだ1970年代前半においては、外国語教授法という研究分野においては、オーディオ・リンガル法という、ひたすら鸚鵡返しをしたり、パターン・プラクティスといった文章の主語や動詞などの一部をとり変えてリピートを繰り返す方法が主流でした。
中学校では教師の声に続けて大きな声で何度も教科書の英文を繰り返し、高校ではGrammarという科目があり、英文法を丸暗記したり、リーディングの教科書を逐語訳したりしたのを鮮明に覚えています。

その後、大学では英文学を学び、卒業と同時に英語教師となり、20年間にわたり高校生を教えました。
赴任したのは、1980年(昭和55年)で、英語教授法もそれまでのオーディオ・リンガル法からコミュニカティブ・アプローチという、外国語でコミュニケーションができる能力を、言語面だけでなく非言語的な側面(対人関係やジェスチャーなど)も総合的に身につけることを目的とする方法に変わりつつありました。
私は英語教師としては、当時勉強不足で、そのような新しい流れに触れる姿勢も不足しており、中学校や高校で教わったとおりに教えており、ある意味で内向きで非生産的な教育を続けており、英語嫌いを多く生み出してしまったのではないかと、反省することしきりです。

さて、コミュニカティブ・アプローチは、その後、さらに研究が深められ、さまざまな具体的な教授方法が提案され、現在に至っていますが、未だに学校ではオーディオ・リンガル法の域を出ない教育を続けられている授業を目にします。
ICTの活用は近年効果的な学びのツールとなっていることで、よく話題にされていますが、その利用についても同様で、そもそもICTに否定的なため、利用が進まないという状況も現実にあります。
もちろん、新しい方法やツールを使うリスクもあることは確かです。
しかし、私たちにとって未知のものを避け、安全志向でこれまでのやり方を続けることで、ひょっとしたら、私がそうであったように、得るものよりも失うものの方が大きくなるかもしれない、ということは肝に銘じておくべきではないかと思います。
日本はバブル崩壊までは世界の経済を席巻する経済大国でした。
しかし、バブル時のショックが大きく、日本全体が安全志向に走り、企業も含めてリスクを避けてきたことで、気がつくとあっという間に30年が過ぎ、周りの国々が経済・技術面で日本を追い抜いてしまいました。バブル以前を知る私の世代の人間にとっては悲しいことです。

学びは未知のものへの接触であり、新たなことへの挑戦でもあります。社会は絶えず変化し、その変化のスピードもどんどん増しています。その意味で、人はいくつになっても学び続け、変化に対応し、変化を楽しむことが大切です。どんな小さな学びでも継続することで、大きな力となります。ともに新たな学びへ挑戦していきましょう!


北海道学習センター機関誌「てんとう虫」133号(2023年10月発行)より掲載

公開日 2024-01-23  最終更新日 2024-01-23

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