【学習センター機関誌から】「こうなればいいな」から始まる通信の研究





羽渕 裕真
茨城学習センター客員教授
茨城大学 副学長
茨城大学 理工学研究科教授

面接授業の題目は『情報と通信ネットワークの神髄』です。
ゼミのテーマは「情報通信・ネットワークの基本を知ろう」であり、Python によるプログラム作成を中心に進めています。
通信ネットワークは電気・ガス・水道と同様にインフラの1つになっています。
この情報通信を基盤として、アンビエント社会、ユビキタス社会、データ駆動型社会、Society5.0への変革が期待されています。
面接授業やゼミでは、これらのキーとなる「デジタル」と進化を続ける通信の理解を深めていきます。

研究分野は情報通信です。
その1つである「光ワイヤレス通信」の研究を少しだけお話します。
照明機器や信号機がLEDにどんどん換わっています。そのLEDは点滅(人間の眼では点灯しているようにしか見えません)しており、その点滅を1と0に対応させればデータ伝送(照明光通信と言います)できるのではないかと考えられます。
照明機器は電源線に繋がっていますので、電源線通信を用いればネットワーク化ができるようになります。
通信エリアは照明が点灯している場所なので、どこで利用できるかも一目瞭然です。
可視光通信は電波と違って電波法(電波は3THz以下の信号)に制約されないので、電波が利用できない場所でも活用できるのです。
ただ、照明機能を維持しながら通信機能の実現、電源線通信との融合、人の移動に伴う照明機器の切り替えなど問題は山積です。
また、可視光は海中での減衰率が電波よりも小さいため、可視光による海中通信の研究も始めています。
可視光による海中通信では、通信機能の実現だけでなく、光のあたらない深海生物への影響も考え、状況にあわせる通信形態の検討が必要になります。

通信では、皆さんが使っているスマホやインターネットの研究ばかりでなく、今まで考えてもいなかった研究もあり、奥が深いのです。
また、通信研究は工学なので、「こうなればいいな」「社会への貢献」が素になっているのです。


茨城学習センター機関誌「ふむふむ」第83号(2023年10月発行)より

公開日 2024-01-23  最終更新日 2024-01-23

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