【学習センター機関誌から】教育のICT化

森下 淳也
兵庫学習センター客員教授
神戸大学名誉教授
(国際文化学研究科)
専門 情報科学

 

 

放送大学2年目となります。私は情報科学が専門なので関心のある「教育のICT化」についてちょっと話します。ICTとはInformation and Communication Technologyの省略形です。教育のICT化というのは、教育活動の中にコンピュータとインターネットによるコミュニケーションを導入するということを表しています。これは情報教育を行なうということではなく、様々な分野の教育全般にてこれを活用するという意味です。小中高等学校にも導入されています。当然、大学教育にも現在進行形で導入されています。

平成の終わりから令和の始めに、多くの大学に先駆けて国立大学がノートパソコンの必携化を実施しました。必携化というのは大学に来て授業を受ける時には、各自、自分のノートパソコンを必ず携帯しなさい、ということです。授業では「教科書とノートとノートパソコンを開いて下さい」となります。教室にはWi-Fiが準備され、必要に応じて資料をその場でネットから呼び出すことが可能です。

これを実現するために大学側が行なったのは、

  • ネットワークを強化し、各教室でWi-Fi経由で学生さんがネットワークに参加できるようにすること
  • 電子メール、ワープロ、表計算、プレゼンテーションなど必要不可欠なソフトウェアのライセンスを学生さん向けに用意すること

でした。

この企てがどのくらい効果があるのかは実は、当時、まだよく判らなかったのですが、導入の後に起こった新型コロナウィルスの流行という大事件で大きく変わったように思われます。この時、大学では対面で授業を行うことができなくなりました。そのためネット経由の「ビデオ会議システム」を使って「遠隔授業」を行うことになったのですが、教員は板書していた講義ノートや資料を全てデジタル情報に変えて、パソコンの画面を共有したり、ネットワーク越しに資料を配付したりして遠隔授業に対応しました。その際、学生さんが皆、必携化でパソコンを持っているため、遠隔授業への移行は、大変スムーズでした。

現在、元に戻って対面で授業を実施していますが、コロナ禍の時の経験がありますので、先生方は、教室において対面ですが過去に作成したデジタル資料を手直ししながらネット越しに配付し授業を行なっています。このことが、必携化の効果があったように多くの人の目に映っています。

従って、他の多くの大学でも、この必携化を導入しつつあります。必携化という言葉が今ひとつと思われているようで、BYOD(Bring Your Own Device)やBYOL(Bring Your Own Laptop)という呼び名を使っている大学もあります。

実は放送大学の兵庫学習センターでもWi-Fiの強化が行われました。そのため、放送大学でも面接授業で同じような体制になるのではと考えられます。皆さんお楽しみに。


兵庫学習センター・姫路サテライトスペース 機関誌「つばさ」第70号(2023年9月発行)より

公開日 2023-12-22  最終更新日 2023-12-22

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