【学習センター機関誌から】カリキュラムとの向き合い方一考

白杉 直子 兵庫学習センター客員教授
神戸大学名誉教授(人間発達環境学研究科)
専門 食環境学

 

 

本職に就いて2年目を迎えました。様々な専門分野の講義内容が記載された「面接授業時間割表」を見て、「おもしろそう!」と思う授業にわくわくしながら付箋を貼っていきました。が、次の瞬間、本学に入学しないと聴講の資格はないんだ、と束の間の妄想であることに気づいたのです。う~ん、残念。

前職でも、多様な専門分野が学科・コース内に共存する学部におりました。この点は本学に似ていると感じます。学生たちが学ぶ様子を目の当たりにして、私がおもしろいと感じたのは、興味・関心の対象の「多様性」でした。どうして人によってこんなにも興味・関心の対象が違うのか。多くの人があまり関心を持たないことにも、世界のどこかの誰かは関心を持ってくれる。だからこそ、世の中はうまく成り立っているのか、と感心したものです。

本学の学生の皆さんも、興味・関心を持つ講義を優先して履修しようとしていると思います。しかし、単位数や時間的制約のため、希望通りの科目を履修できない場合もあるでしょう。先輩方はこうした壁をどう捉えて、乗り越えたのでしょうか。

私は前職で、学部新入生が最初に必ず受ける科目を担当していました。毎回、異なる分野の教員が登壇するオムニバス形式の授業で、例年、新入生たちはわくわくした表情で参加していました。しかし、興味のない授業では次第に退屈そうな表情を見せるようになるのです。既存の学部では、真面目に授業に出ることで専門性が身につくカリキュラムになっています。しかし、幅広い分野の講義を受ける学部において、受け身で履修するだけでは、「自分の専門は何なのだろう?」と根無し草のように感じる人も出てきてしまいます。

さて、学生たちはこのオムニバス形式の授業の中で、「学際」という言葉を知ります。将来、社会問題の解決に挑む際、一つの専門分野だけでは対応しきれないことを知る機会を得ます。分野や教員によって、視点や、表現方法、研究手法が異なることにも気づきます。その後の学生生活においても、不得手な講義のレポート作成の過程で、未知の分野の情報収集の方法や、苦手なことも何とか理解する術を身につけていきます。ある卒業生は言いました。職場で新しい課題に挑戦する際に、他の人たちより柔軟に向き合おうとする自分に気が付いた、と。

本学の学生の皆さんにとっても、主体的に時間割を作成し、学習を進める中で、自分なりの学びのスタンスや方法を確立していくことは非常に重要です。4月2日の入学式で放映された学長メッセージの中で、本学の特徴として、「結晶性知能」を育んでこられた学生の比率が高いことを挙げていました。「流動性知能」のピークを迎える年齢層が圧倒的に多い一般の大学の学生とは、カリキュラムへの向き合い方に違いがあることは想像に難くないです。しかし、年齢層や経験も多様な学生の皆様の中で、もしも、興味を持てない授業を受けることになり、学びのモチベ―ションが下がりそうになったら、この拙稿を思い出して、ほんの少しでも参考にして頂ければ幸いです。


 兵庫学習センター・姫路サテライトスペース 機関誌『つばさ』第69号(2023年5月発行)より

公開日 2023-07-21  最終更新日 2023-07-21

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