【学習センター機関誌から】卒業研究のススメ

情報コース〈全科履修生〉 清水道代

放送大学に在籍して20年の節目となる2020年、4コース目で初めて「卒業研究」を履修しました。この履修が、卒業研究をご検討されている皆さまの参考のひとつになればと思い、以下に簡単な経緯と経験談を述べます。

放送大学に入学直後から「卒業研究をやりたい」と考えていました。しかし、具体的にどうすればいいのか全く分かりませんでした。3年目を過ぎた頃、当時の所長に相談した際、大変厳しいことを言われ、研究は中途半端な覚悟ではできないこと、研究環境や学力が研究レベルに達することが必要だということを思い知り、自分の考えが甘いことを反省して卒業研究を諦め、単位認定試験で得た単位で卒業しました。他コースに再入学したものの、生物(植物)や地球科学に対する関心が薄れることはなく、改訂される自然系の科目を取りながら、明確な目標がないまま漫然と在籍し、卒業と再入学を繰り返しました。

放送大学で自然系を学ぶのはもう大学院しかないと考えていた2019年6月、鳥取SCで開催された卒業研究ガイダンスに参加しました。大学院に進学するため(自身が研究レベルに達するため)に、やはり学部での卒業研究の経験が必要と考えていたタイミングでの開催でした。

本部から来られた辰己丈夫先生(情報コース)は参加者らに対したいへん熱心に卒業研究を勧められ、心が動いた一方、情報コースにいたものの情報学に馴染めず、そのことを先生に話すと「情報は、あらゆる学問の基盤です。清水さんがやりたいことをやれば、情報コースの研究になります」といわれたことでやる気スイッチがONになり、卒業研究に取り組む決意をしました。「やりたい」から「やります」という、覚悟が芽生えた瞬間でした。


2019年8月中旬提出の<研究計画書>作成にあたり、小林一所長はじめ、たくさんの方に相談に乗っていただきました。自身では「卒論の書き方」といったタイトルの図書などで卒論を書く知識やノウハウを学び、課題(研究目的)を探るため自分のテーマに近い先行研究を論文検索サイトで調べて読みました。方法に悩みながら練りに練った研究計画書は無事にとおり、卒業研究履修が決まったときはとても興奮したことを思い出します。

明けて2020年。新型ウイルス感染拡大により人々の行動が厳しく制限され、東京オリンピックが延期されるなど、誰も予想していなかった大きな大きな社会的影響下で、不安に満ちた新学期が始まりました。卒業研究と並行して大学院選科生として科目履修をし、卒業後の放送大学大学院進学を視野に入れた学習と学芸員資格の取得も計画していましたが、コロナ禍で、思うようなキャンパスライフを送ることができなくなりました。

卒業研究は、本部での対面指導が一切なくなり、指導教官の近藤智嗣先生(情報コース)とはメール、オンラインのみのやり取りでした。4月の緊急事態宣言下で図書館が閉館、外出自粛となったため、インターネットで文献検索をし、論文をダウンロードして読み込み、疑問に思ったことはノートに書きだして何度も読み返しました。6月から本格的な研究に入りましたが、コロナ禍での移動制限のため研究計画を何度も見直すことになり、ほかの人がどんなペースで進めているかもわからず、気持ちが焦るばかりで、どこに向かっているかわからない手探りの日々が続きました。このような中、指導担当の先生、研究協力者のおかげで、なんとか出口を見つけることができ、紆余曲折ありましたが、2020年10月31日(大安)、提出日締切り前日に卒業研究報告書を郵送(提出)することができました。 提出の喜びも束の間、11月14日の大学院二次試験(面接:Zoom)対策、発表用スライドの作成と練習、12月5日には卒業研究発表会(口頭試問:Zoom)、同月13日大学院合格発表と、コロナ禍の2020年を全力疾走しました。


卒業研究をやってよかったと思うことは、20年目にしてようやく「自分のテーマをみつけられた」ということです。また、本部主催学位記授与式が中止となり、残念ながら一度もお会いできませんでしたが、近藤智嗣先生の指導を受けられたこと、同期の皆さんの多様な卒論発表を拝聴できたことは、いい刺激と経験になりました。また、参考にした放送大学の過去の卒業研究*は、どの研究テーマもオリジナリティーに満ちていて、この多様性が放送大学の特長であることを再認識し、教養学部の強みが発揮されていることを実感しました。謝辞を拝見すると、先生の指導はもちろん、たくさんの人の協力があったことがよくわかります。そして、研究に真摯に向き合われた方々の意欲が読み取れます。

放送大学で学ぶ目的やゴールは人それぞれだと思いますが、卒業研究6単位以上の価値を得たこと、研究テーマに向かう覚悟と責任の重みを実感しました。この経験を大学院につなげ、自分のテーマを掘り下げながら<いばらの道>を進んで行きたいと考えています。

研究は、ひとりでするものですが、ひとりでできるものではありません。わたし自身、研究環境に恵まれたこと、本研究をご指導、支えていただいた先生方、貴重なアドバイスや励ましの言葉を皆さまからいただいたことに、心から感謝しています。これも、卒業研究で得られた財産です。

在学生の皆さまにも、教養を深めることはもちろん、ご自身のテーマを見つけ、社会に貢献できる研究報告書をまとめ上げる実感を得ていただきたく、卒業研究をオススメします。わたし自身、放送大学の先輩たちから卒業研究を勧められ、その意味をようやく理解しました。

放送大学には、ライティングの基礎を学ぶ科目もあります。また、例えば<文献レビュー>も、それ自体が一つの研究論文になります。鳥取SCの所長、客員の先生方が相談に乗ってくださいます。放送大学の強みを活かした、あなたにしかできない研究テーマが見つかることを願っています。Good Luck !


*放送大学卒業研究報告書は、システムWAKABAから閲覧・ダウンロード可能です。  

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鳥取学習センター機関誌「ぷりずむ」181号より

公開日 2021-09-17  最終更新日 2022-11-11

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