「放送大学が人生の分岐点」と語る関口浩至氏(沖縄学習センター科目履修生)に、「放送大学はすごい大学なんだ!」というくすぐったい話と、沖縄あるあるについて聞きました。
琉球大学医学部 保健学科
老年成人看護学講座 在宅慢性看護学領域 准教授
関口 浩至
私が来沖したきっかけは、高校生時代に通っていた空手道場の先生から「沖縄は空手発祥の地だから、そこで本場の空手を習うといいよ」と言われたことでした。沖縄県内のある大学へ進学し、空手を習いながら大学では民俗学を専攻し、県内離島を含めた村落のシーサーをバイクで廻り、沖縄の文化に触れました。
沖縄に来てすぐ「部落」という言葉を耳にして驚きました。県外から来た私にとっては、「部落」という言葉は差別用語であり、「よそ者を寄せ付けない地域」という認識であったが、沖縄では違ったのです。
ある日、シーサーを探し、恐る恐る「部落」の奥まで入っていくと、おじぃやおばぁが「あんた何処から来たのねぇ~」と笑顔で声をかけられ、お茶を飲みながらおしゃべりしたのです。沖縄ならではの、通りすがりのいわゆる異邦人を受け入れてくれるおおらかな文化を感じる経験でした。
沖縄ライフはカルチャーショックの連続でした。異国情緒あふれるエンダー(A&W)や、時刻表どおりに来ないバス。待ち合わせ時間から4時間経って現れた友人の笑顔。どれもが「沖縄っていいなぁ」と思えたのです。
そんな沖縄ライフとは別に、私は、「自分は何者なのか」「今やっている勉強は何になるのか」と、疑問だらけの大学生でもありました。あらゆるジャンルの本を乱読しながら、やっぱり「答え」は見つからないまま、大学卒業を目前とした1月、自衛官募集の看板を目にし、自分の中にある混沌とした思いを何かにぶつけたいという思いが押さえきれず、大学を中退し自衛隊へ入隊しました。今思えば、若気の至りの極みでした。
自衛隊では災害出動など社会の役に立つ任務にやりがいを感じながらも、沖縄を数年離れ、もう一度戻りたいという思いは募り、自衛隊を満期除隊後は知人から紹介されたT病院の住み込みの看護助手として、再度沖縄の地を踏むことができました。
仕事をしながら看護学校に通い、准看護師を取得。その後、正看護師となれたのは30才の頃でした。仕事をしていると、多くの「知らないこと」があることに気づかされます。患者さんの死にも直面し、自分には何ができるのだろうかと悩み、また本を乱読したり、人に人生の話を聞いてまわったりする自分がいました。そのような時、目にしたのが放送大学のポスターでした。
放送大学に入学したのは38才の時。学習センターでは老若男女、一生懸命勉強に打ち込む学生の姿に圧倒されました。そのような中、船津衛先生の「自我の社会学」という授業に出会いました。
人が「自分とはなんだ?」と疑問を持った時、本当の自分を見つけようとして、自分の殻を一枚ずつ脱ぎ捨てて行き、中心にある自分を見つけようとする。しかし、全てを脱ぎ捨てていっても、結局、自分とは何か?という疑問にまた行き着いてしまい、結果的にまた自分を見失ってしまうのだ。だが、実は今まで脱ぎ捨ててきたもの全てが、自分(真理)なのである。
これも、それも、あれも全て脱ぎ捨ててきたものが自分(真理)なのだと船津先生は述べています。この授業を受けた時、「あぁそうなんだ。自分の歩んできたこと全てが、つまりそれが自分であるということ。そうか、これでいいんだ!」と腑に落ちました。ずっと探していた人生の疑問の一つの答えが見つかった瞬間でした。放送大学に入学しなければ、未だに答えにたどり着かなかったかもしれません。
それから、私は放送大学を卒業し、卒業研究でお世話になった久木田先生(元琉球大学医学部教授)から、さらに大学院で学びを続けるよう薦められ、大学院へ進学し博士課程を修了しました。思えば、私の人生の節目には必ず恩師となる人との繋がりがあり、そして放送大学があった気がします。
皆さんもご存じのように、放送大学には幅広い分野の様々な教養科目が揃っています。自分の知りたいことや求めている疑問の答えを、放送大学の学びの中に見出していくことがきっとできると思います。
2022年4月から科目履修生として放送大学沖縄学習センターでの学びを再開します。また新たに学びたいテーマが出てきました。調べてみると放送大学には、それに関連する科目が準備されていました。「知りたい」という好奇心にいつも応えてくれる存在が放送大学です。
全国の学生のために最新で興味深い学習テーマを提供し続けている放送大学は正直凄いと思います。放送大学自体も日々ブラッシュアップし続けながら私たちの学びをサポートして行って欲しいと希望します。
今後も放送大学で学び続けていきたい、そう願っています。
関口氏は、平成27年 琉球大学学術研究優秀者賞を受賞されました。
受賞はなんと、3度目です!
沖縄学習センター機関誌「キャンパスニライ」 第102号より
公開日 2022-06-17 最終更新日 2022-11-11