【学習センター機関誌から】踏み出せば新たな視点が

長野学習センター所長
 大塚 勉

 

 昨年4月に長野学習センター所長として赴任してから、1年が経とうとしています。不慣れなことばかりで、あっという間に時間が経ってしまいました。学習センターとして、新型コロナウィルス感染症が治まらない中で、面接授業や講演会、さらに単位認定試験など様々な事項に対応することとなりました。皆様もいろいろ制約が多い中で学ばれるのは大変であったとお察し申し上げます。ただ、ウェブ配信授業が中心の放送大学は、コロナ禍の中で威力を発揮した面もあると考えています。

 さて、私はこれまで「野外を歩いて考える地質学」をやってきました。もう少し具体的に申しますと、まず、地質を考える上で必要な証拠が得られそうな野外、あるいは明らかにすべき課題が見えている現場に出かけて調査を行います。そこで、地層や岩石に関する証拠を揃え、地質構造の発達過程や地域の成り立ちを考えるのです。

 40年以上そのようなことをやってきたのですが、ある課題に取り組んでいると、その過程で新たな興味深いテーマや課題が浮かび上がってくるのです。岩石や地層が、野外で露出している場所を「露頭」と呼んでいます。その露頭を繰り返し訪れて観察したり、必要なことがらを記録したりしていると、当初の課題とはまた違った面白さに気が付くことがあるのです。机の前でじっとしているよりも、露頭やその地域が語りかけている場に身を置くことが重要と思ってこれまでやってきました。

 敢えて行動すると新たな事実に気づいたり、これまでとは異なる視点を得たりします。これは決して地質学の世界だけではなく、一般的なことではないでしょうか。これまではあまり接してこなかった新たな分野について学び始めることも、「敢えて行動する」ことに当たります。また、これまで学んだ分野でさらに歩を進めて深く学ぶことも「行動」です。

 放送大学では多くの教育コンテンツが提供されています。そこには、皆さんの新たな行動を支える機能があります。新たな学びに一歩を踏み出すことによって、ぜひ新たな気づきを体験してみてください。

 再び自分の話題に戻ることをおゆるしください。最近では、ささやかではありますが、これまでやってきた地質の知見を社会に還元する機会も多くなりました。そのようなときでも、内容をまとめる際には、これまで馴染みがなかった分野にも踏み込んで勉強する必要がどうしても出てきます。ここでも好むと好まざるとにかかわらず、新たな出会いがあります。実はここでも予期せぬおもしろさを体験しています。


長野学習センター機関誌「アルプス」第118号(2023年4月発行)より一部編集して掲載

公開日 2023-09-22  最終更新日 2023-09-22

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