【学習センター機関誌から】私とジェンダー研究②~台湾文学との出会い

放送大学神奈川学習センター客員教員 白水 紀子 

二〇一九年、アジアで初めて同性婚が合法化された台湾では、早くも九〇年代からLGBT文学が大きな高まりを迎えていました。

二〇〇五年から一年あまり北京日本学研究センターに主任教授として赴任していた私は、仕事の合間に中国のジェンダー研究者と交流して、ジェンダー研究には不可欠のセクシャリティの問題に中国でどのような取り組みがなされているか研究の動向をさぐったり、LGBT支援組織を訪問したりしました。


ただ残念なことに、中国では戦後、一九九七年の刑法改正まで同性愛を犯罪扱いしていたため(「流氓罪」を適用)、LGBTの研究は緒に就いたばかりで、国内で出版された文学作品もそれほど多くはありませんでした。
そこで先ずは台湾のLGBT文学の作品集『台湾セクシュアル・マイノリティ文学(全四巻)』(2008~2009)を出版して、東アジアのLGBTの人々が抱える問題を共有したいと考えました。
そして作品を選ぶ編集作業をする中で、台湾にはLGBT文学以外にも女性文学や郷土文学に優れた作品が多数あることを知り、それらの翻訳紹介もするようになりました。

それまで台湾へは学会などで数回訪れたことがあるだけでしたが、二〇一〇年に台湾大学に客員教授として半年間の長期滞在をする機会があり、台湾の学生さんたちに中国の女性文学の講義をするかたわら、台湾の作家とも交流をすることができました。

私が翻訳をした作品のうち、たとえば陳玉慧『女神の島』は、沖縄から台湾に嫁いだ祖母、大陸から台湾にやって来た外省人と結婚した母、そしてドイツ人と結婚した「私」の女三代にわたる家族の物語であり、また甘耀明『鬼殺し』には台湾原住民族の血を引く客家の少年を主人公に、日本統治下の台湾の人々のアイデンティティの揺らぎが描かれており、どれも日本の歴史と深いつながりをもったものばかりです。


こうして、最近では台湾文学の翻訳をしながら、その紹介にも微力ながら力を入れるようになり、台湾の作家を日本に招いてシンポジウムをしたり、日本の作家との交流のお手伝いをしたりするようになりました。
たとえば早くは二〇〇九年に津島佑子×陳玉慧(神奈川近代文学館)、最近では二〇一七年に東山彰良×甘耀明(ブックファースト新宿)、江國香織×巴代・呉明益・蔡素芬(八重洲ブックセンター)の対談などで司会を務めました。
現在はちょうど『台湾文学ブックカフェ』全三巻を刊行中で、昨年一二月に刊行した第一巻『女性作家集 蝶のしるし』は翻訳も私が担当しました。
各巻にはLGBT作品も一~二編収録されており、春には関係する日台作家の対談やシンポジウムをおこなう予定です。
こんなバラエティに富む台湾文学についても、機会があれば面接授業で取りあげたいと思っています。


 

(神奈川学習センター機関誌「神奈川学習センターふゆだより」第89号(令和4年2月)より)

 

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