【新任所長挨拶】世界最古の大学と放送大学(山梨学習センター所長・村松俊夫)

山梨学習センター所長 村松 俊夫 

皆様、初めまして。この4月から、放送大学山梨学習センターで皆様の学修をお手伝いさせていただくことになりました村松と申します。前任の山梨大学では、教育学部美術教育系のデザインを担当しておりました。

山梨大学教育学部には学部入門ゼミというのがあり、毎年新入生に学部や系で学ぶ内容や学修方法のガイダンスをしています。私はその授業の折に、「世界最古の大学」について紹介しておりました。ここではそれをお話ししたいと思います。

現在の「ユニバーシティ(University)」につながる最も古い総合大学は、諸説ありますが11世紀から12世紀、フランスのパリとイタリアのボローニャ(日本ではソーセージの名前としても知られていますね)で誕生したといわれています。それが、いまも存在しているパリ大学とボローニャ大学です。

当時はラテン語で「ウニベルシタス(universitas)」と呼ばれていました。語源的には(共同体)を意味する言葉であり、学問を目指してそれぞれの都市に集まった教師や学生の自治組織(ギルド)として誕生したものです。パリ大学は教師のギルド、ボローニャ大学は学生のギルドでした。

この時代の大学は、広いキャンパスを抱え、教えを受ける学生が1カ所に何百人も集まるようなものではありませんでした。固有の土地も建物も持たない人々の集団だったのです。教師と学生はあたかも家族のような関係を持ち、それぞれの授業に対して契約を結ぶような柔軟性のある組織でした。なんとなく、放送大学に似ていませんか?

とくに世界最古といわれるボローニャ大学が生まれた理由には、この地がイタリア北部の人流・物流の中心地で、一般市民に商取引に係る知識などが必要になってきたこと。また、街が発展するにつれ都市が自治権を獲得し、ある程度領主の権力から自由になったことなどが挙げられます。

ボローニャ大学は、学生が中心になって作った大学です。当時の学生は、例えば聖職者であったり、職業組合(ギルド)認定のマイスターであったり、一定の収入がある年かさの学生が多かったようです。つまり、学びたい人々が資金を出し合い、学びたいことを教えてくれる教師を呼んで学んでいたのです。ですから、学長にあたる職は学ぶ側の学生が務めました。事務局長も事務職員も学生側が担当していました。

このように、もともとの大学の起源は学生や教員の共同体から出発したものです。すでに組織化されたものや、特定の場所(キャンパス)があって成立してきたものではありません。まず、おおもとには「学びたいという個人の思い」と「団結」があり、この二つによって自発的に生まれてきたといえましょう。つまり、大学の主役は皆さん「学生」なのです。その学生の「何かを学びたいという強い意思」です。このことを心にとめて、勉学に励んでいただきたいと思います。

これからの、皆さんの学修が実り多いことを願っています。


山梨学習センター機関誌「おいでなって」2022年4月号より

公開日 2022-05-18  最終更新日 2022-11-01

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