【学習センター機関誌から】「ブライト・ヤング・ピープル」という人たちを、知っていますか?

髙田 英和
放送大学福島学習センター客員教員
福島大学教授(人間発達文化学類)
(専門分野:近現代イギリス文学・モダニズム)

20世紀の初めの、正確には1920年代の初めの、英国は主としてロンドンに出現したとされる人びとを、「ブライト・ヤング・ピープル」(Bright Young People)と呼び、その彼ら/彼女らの日常の振る舞いは、たとえば、次のようであったとされています。

“A ‘Baby’ Party in a Public Square” from Punch (Vol. CLXXVII, 1929).

ここからは、一言で、現在のことばで、記すなら、「パーティー・ピープル」と言っても良いくらい、今を楽しむ、今この瞬間こそをあるがままに生きる、そのような自由な若者たちのすがた・かたち、生きざまが見てとれるでしょう。

この、若者たちの、ある意味、突飛な行動と活動は、当時の英国のメディアを大いに賑わせ、騒がせていたといいます。それは、当時の、新聞でも、確認することができます。ひとつ例をあげてみると、『デイリー・ニューズ』には「先週、ブライト・ヤング・ピープルのベビー・パーティーが開催され、何人かの招待客が乳母車で登場しました」と書かれています――“the Bright Young People, who last week held a baby party at which some of the guests arrived in perambulators” (Daily News, Wednesday 17 July, 1929, 9)。

1920年代初めの英国に出現した、新しい若いグループ・集団を「ブライト・ヤング・ピープル」といい、そして、その彼ら/彼女らの文化を、総じて、「ブライト・ヤング・シングズ」(Bright Young Things)ということは、周知のことであるし、その特徴を、一言で述べるのなら、それは、「貴族的」且つまたセレブ的、であるということも、広く知れ渡っていることでしょう。ここで、おもしろいのは、「貴族的」・セレブ的とは言っても、この若者たちには、お淑やかさは微塵もなく、大量の飲酒をするわ、麻薬も嗜んだりと、朝方までどんちゃん騒ぎの「パリピ」の毎日という感じで、ある意味、そこには、大衆・消費文化の醍醐味とその雰囲気が、言い換えれば、ハイ・カルチャーとは対照的なポピュラー・カルチャーが、これでもかと言うほど全面に押し出されていて、それゆえに、この点にこそ、この若者たちの文化のおもしろみや歴史的な意味があるのかもしれません。ただ、この「ブライト・ヤング・ピープル」とその文化は、1920年代の末には、衰退したとされているようなのだが、はたして、そうなのでしょうか。

一緒に調べたり、考えたりしてみませんか。
 (きっと、楽しいし、ほんと、おもしろいと思うんですけど。どうかしら?)


福島学習センター機関誌「もみじ」102号(2023年7月発行)より

公開日 2023-09-22  最終更新日 2023-09-22

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