【学習センター機関誌から】梅雨に入り思うこと

山下 樹三裕
放送大学長崎学習センター客員教授

今年6月2日から3日にかけて、台風2号に刺激された梅雨前線により高知、和歌山、愛知、静岡の各県に線状降水帯が発生し、100年に一度といわれる(最近よく耳にしますが)大雨を降らしました。この大雨は、広範囲に大きな災害をもたらし、死者も出ました。近年、線状降水帯による大きな災害が日本の各地で毎年のように発生しています。過去には、長崎大水害の記憶もあろうかと思います。また、あまり耳慣れない「超大型台風」という言葉も最近聞くようになってきました。

これらの異常気象は日本に限ったことではありません。「2022年地球気候の現状に関するWMO(世界気象機関)報告書」によりますと、「干ばつ、洪水、熱波が世界の大部分に影響を与え、過去8年間の世界気温が最高を記録した。海面上昇と海洋熱が記録的な水準にあり、欧州では氷河の融解記録が更新され、南極の海氷域が史上最小にまで減少した。」とあります。この中で、2022年に世界の平均気温は、1850〜1900年の平均気温を 1.15℃上回ったことや、二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素などの温室効果ガス濃度は、世界の統計値が入手可能な期間(1984〜2021)において、直近の2021年に観測史上最高値を記録したことを記し、2022年も上昇し続けているとしています。

この様な状況に、世界は手をこまねいているのでしょうか。今から31年前、のちに「地球サミット」と呼ばれる国連環境開発会議が、地球環境の保全と持続可能な開発の実現のための具体的な方策を得ることを目的として、1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催されました。172の政府代表とNGOからの参加者2,400人が集まる国際会議です。ここで、いくつかの条約が締結されました。その中に「気候変動枠組条約」があり、「二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を減らす政策を採用し、措置をとる」といったものでした。この締約国会議(COP)は、ほぼ毎年開かれ、その後、京都議定書(COP3)、パリ協定(COP21)により、具体的な削減目標が設定されていきました。世界各国は、この削減目標の達成に向けて、二酸化炭素を大量発生する従来の化石燃料の利用から太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用に転換する措置を進めています。しかし、一朝一夕に事は運びません。あまり猶予は無いようですが、まだ時は必要なようです。

では、我々一人一人に出来ることは何も無いのでしょうか?いや、きっとあるはずです。皆さんも一度考えてみては如何でしょうか。今、小雨降る空を見上げて、大きな災害がこれから起きないことを祈りつつ。


長崎学習センター機関誌「出島」113号(2023年7月発行)より

公開日 2023-09-22  最終更新日 2023-09-22

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