『健康への力の探究(’19)』(放送授業・ラジオ科目)

主任講師:戸ヶ里 泰典
(放送大学 教授)

<推薦者のコメント>杉浦 正幸さん(全科履修生)

私のお勧めは「健康への力の探究」です。
この教科に出会い、従来の医学にある病と闘う疾病生成論とは違う、健康を造るという健康生成論を知りました。
今の世の中は、災害や疫病、めまぐるしい情報化など、多くのストレスを抱える時代だと思います。
そんな中で生きていく術の一つとして、自ら進んで健康を造りだす ”健康生成論” に感銘を受けました。
人生100年と言われるように健康年齢を上げようと考える方は多くなっていると思います。
この教科でヘルスリテラシーを高めて豊かなQOLを掴み取って戴けると良いのではないでしょうか。


<戸ヶ里先生からのコメント>

コメントありがとうございました。
「健康」と聞くと、タバコを吸わない、お酒を控える、カロリーを取りすぎない、運動をする、休息をとる、など、健康に関係する行動や習慣をイメージする方がとても多いと思います。

確かにこうした行動は身体や心のために大事ですが、WHO(世界保健機関)が提唱する「ヘルスプロモーション」という考え方の中ではそれは一部に過ぎないとされています。
むしろ個人、あるいは家族・組織・地域など集団の中にある「力」つまり、「健康への力」に着目して力をつけることが大事であるといわれ、英語でエンパワメント(empowerment:力をつけること・権限を与えること)と呼ばれています。

本授業はこの健康に関連するエンパワメントに着目して健康について改めて考えることを目的としています。
そこで授業では、健康とは何か、について問い直すところから始めています。そして「病気でないことが健康」という前提で病気を予防したり治療する既存の医学や医療の立場(疾病生成論)とは別に、「病気をもっていても健康でいることもできる」という前提で、健康をつくりだす要因を見つけ、応用していく立場(健康生成論)について解説を行っています。

つづいて、その健康生成論の立場から、いくつかの重要なキーワード・考え方について解説します。
まず、ナチスドイツの強制収容経験者の例をモチーフに、世の中に遍く存在している「ストレス」に着眼して、ストレスとうまく付き合うストレス対処力として首尾一貫感覚(SOC)を紹介し、関連する様々なストレスに強い力について解説を行います。

さらに、今般のコロナ渦で注目されましたがメディアに氾濫する玉石混交の健康に関する情報の中から、いかに正確な情報を入手し読み解き、活用・評価していく力であるヘルスリテラシー、普段の何気ない家庭生活の中で繰り返されるルーチンが持つ力、私たちが生活する集団や組織・地域が持っている力でもあるソーシャルキャピタル、病気・疾患・障害など様々な問題を抱える人同士が集まることで得られる力、健康・医療の専門家の存在と専門家とともに考えることで得られる力、などについてゲストを招きつつ、具体的な事例を含めて解説をします。

この授業は人生100年時代に、病気や障害にならないよう、恐る恐る生きていくことを目指しているわけではありません。コメントをいただいた杉浦さんがおっしゃっているように、皆さんそれぞれの立場でそれぞれの豊かなQOL(生命・生活・人生の質)を得ることを、講師一同願って授業を行っています。皆さんにとってなにがしかの糧にしていただければ幸いです。



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公開日 2022-12-16  最終更新日 2022-12-16

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