
私が放送大学に入学したのは2015年、実家の引きこもり生活から脱して東京に上京した27歳のときでした。放送大学の授業の質の高さと低い学費、受講の自由度や日頃利用しているサービスの多くで学割が利用できることに魅力を感じての入学でした。そこから10年、授業を楽しんでいたら心理と教育コースの卒業要件を満たし、情報コースに再入学して今も学習を続けています。
私は子供の頃からとにかく勉強が嫌いでした。手元の辞書によると、勉強の語源は「気が進まないことをしかたなくすること」とありますが、私の両親は「将来楽をするために今苦労をするんだよ」とまさに勉強を重視する教育方針でした。両親の教育方針に姉2人はうまく適応したのに対し、私は今この瞬間を楽しみたいという欲求が強く、次第に勉強することが両親への服従のように感じられ、やがて高校も中退することになりました。
そんな私が放送大学の学習を続けられているのは、放送大学では一切「勉強」をしている感覚がないからでしょう。学ぶこと自体がゲーム・アニメ・プログラミングなどの自分の趣味と同じ楽しさをもっていました。中島らもは、「教養」を「一人で時間をつぶせる技術」と評しましたが、放送大学で身につける教養はまさにそのような技術であると言えるでしょう。今私が先行研究を調べる機会が最も多いのは趣味の格闘ゲームをしているときです。要求される反応速度にどのような違いがあるか、感情が大きく喚起される競争場面でどのような方略が有効か、特定場面の振る舞いに男女差があるように見えるが進化的な説明は可能か、上達が早い人と遅い人の違いはなにか。単純に時間を消費すると思われがちなゲームであっても、自分の中で問いを立てることができれば、それは深い学びの入口となります。
大学教育の機会が高校卒業から社会人になるまでのある決まった期間にしか存在しないことはとてももったいないことだと思います。大人がNetflixに加入するかのように学問に触れられる、「今を楽しみながら人生を豊かにできる」学びの場として、放送大学がこれからも存在し続けることを願っています。
プロフィール
種延 真之(たねのぶ まさゆき) 放送大学 岩手学習センター所属
2015年 心理と教育コース入学
2023年 心理と教育コース卒業/情報コース入学
2024年 認定心理士資格取得
※2025年12月8日発行 文部科学教育通信「私の放送大学」掲載の記事です。










