【学習センター機関誌から】私の「生涯学習」-茶道と日本文化-

森本 千恵

放送大学愛媛学習センター客員教員

大学の教員として一歩を踏み出した時、恩師より「僕たちの仕事は、一生勉強だよ」と言われ、「あぁ、勉強嫌いの私がこれから先ずっと勉強し続けなければいけないのか」と気持ちが重くなったと同時に、これからも研究を続けて業績を積み、それを学生への教育に反映させるという責任が肩に重くのしかかったことを、定年退職が見えてきた今でも昨日のことのように思い出します。ちなみに、私の教育研究領域は「生化学」です。

「生涯学習」とは、文部科学省のホームページより引用すると、「一般には人々が生涯に行うあらゆる学習、すなわち、学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられる」とあります。

自ら学びたいという積極的な意思を持って学び続けるのが本来の「生涯学習」の姿だと思っている自分にとっては、教育研究領域における「一生勉強」は生涯学習とはいえないでしょう。

私は、20歳代前半に茶道(裏千家)の門を叩き40年ほど経ちました。茶道の師匠が他界して以降は他の先生の門下に入ってお稽古を続けることはしておりませんが、いつでも稽古や茶事ができるように、家をリフォームした際に茶室になる和室を作りました。

そのような趣味の領域だった茶道を学生の学びに活かす機会が数年前に訪れました。私の勤める女子大学・短期大学の教養科目の一つに「茶道の文化」という科目があります。以前は裏千家の先生に非常勤講師をお願いしていましたが、コロナ禍以降、財政面やリモートなどの多彩な授業形態を行っていかなければならないなど様々な理由から、学内で授業を担当できる人材として私に白羽の矢が当たったという訳です。

趣味を「学問」にするために、お点前や道具についてのみならず、多方面から茶道に関する様々な知見を得られるよう「茶の湯文化学会」という学会にも入会しました。茶の湯の歴史や時代背景、茶道と日本文化との関わり等を勉強していくうちに、益々深く勉強したいと思うようになりました。「これこそが生涯学習だ」と実感した瞬間でした。

茶の湯にはあらゆる日本文化が関わっており、狭い茶室の中には日本文化が凝縮しているといっても過言ではありません。茶道人口が減りつつある一方で日本文化が見直されている昨今、自分の生涯学習に基づいた授業を通して、若い人たちに少しでも茶道の魅力を伝えられたらと思うこの頃です。


愛媛学習センター機関誌「坊っちゃん」第119号(2025年3月発行)より掲載

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