【学習センター機関誌から】シリーズ古建築を楽しむ

心理と教育コース全科履修生
乾　陽子

プロフィール紹介
横浜市出身。高校卒業後、大学・大学院で建築学を学び、専門は「市民まちづくり」。
結婚を機に福井に移住、25年。現在は地方公務員として建築職の業務に従事。
過去に移住や空き家活用、住教育などに取り組む。
放送大学には、2020年第２学期全科履修生「心理と教育コース」に入学、2022年には認定心理士の資格取得。
１級建築士、宅地建物取引士のほかヘリテージマネージャーと言う古い建物の保存活用の専門家の資格を有し、
「ふくいヘリテージ協議会」において、空き家活用について積極的に活動中。
趣味は、街歩き、食べ歩き、絵本。９月に基礎絵本セラピスト®の資格を取得し、古民家を会場とした「大人の絵本の会」を開催中。

はじめまして。今期より古建築を散策する連載を書かせていただくことになりました。
私の所属する「ふくいヘリテージ協議会」では、歴史的建造物の保全活用の専門家であるヘリテージマネージャーを中心に、地域に眠る歴史文化遺産を発見し、保存し、活用して、地域づくりに活かす活動しています。全国の建築士会を端緒に「全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会」も設立されていますが、福井県の「ふくいヘリテージ協議会」はその中でも人知れず積極的に活動しています！
2022年には、WEB上に「歴史的建造物等コンシェルジュサイト」を立ち上げました。古建築マニアに限らず、一般の方にも身近に古建築があることを知ってもらい、もっと気軽に活用して、愛着のある施設として将来へ受け継いでいきたいという思いから作った、使える古建築検索サイトです。

このサイトに掲載されている古建築を、紙面上で数軒ずつご紹介していきます。みなさまも、散策に、趣味のお教室に、ライブ会場に、撮影に、会食に･･･お使いいただけると幸いです。そのお写真などお見せいただけるとさらに嬉しいです。また、ヘリテージ協議会では古建築となったご実家の活用や空き家の相談にも対応していますので、お気軽にお声掛けください。お問合せは各サイトから受付けています。

ふくいヘリテージ協議会サイト　https://www.fukuiken-kenchikushikai.or.jp/fukuiheritage/
歴史的建造物等コンシェルジュサイト　https://www.rekikenkatuyo-fu.com/
歴建コンシェルジュFacebook(イベント情報)　https://www.facebook.com/fukui.rekikenkatuyo
歴建コンシェルジュInstagram(イベント情報)　 https://www.instagram.com/fukui_rekiken_concierge?igsh=cTdzcjI0NDlucWI4

歴史的建造物等活用コンシェルジュサイトより
シリーズ　古建築を楽しむ～今庄宿その１～

初回は2021年に重要伝統的建造物群保存地区に選定された『今庄宿』をご紹介します。
南越前町今庄は、古来より江戸・京都方面から北陸方面への玄関口として発展しました。1602年に宿場が置かれ、1896年に官設鉄道北陸線が開通すると今度は鉄道の町として栄えました。現在でも街道沿いには江戸期から昭和初期の建物が点在し、宿場町の風情が随所に残っています。ＪＲ北陸本線の今庄駅からすぐに位置するため、電車で行って町並みを散策することができ、車がなくても楽しめます。この町並みの鍵になるのが、街道中心部に建つ『旧旅籠若狭屋』。江戸時代後期の建物で今庄宿の代表的な歴史的建造物ですが、解体の危機がありました。この時地元の方々が中心となりＮＰＯ法人今庄旅籠塾が発足、改修し、事務局を設置、地域住民や観光客の集う場所として休憩やイベントにも活用されています。「十割そば六助」がここで営業しています。
その近くでひときわ目を引く洋風建築は『昭和会館』です。旧加賀藩の本陣跡地に昭和５年郷土の偉人「田中和吉」氏が私財を投じて建設しました。当時珍しい鉄筋コンクリート造り３階建て。併設された迎賓施設の『静心閣』と合わせて、社会教育の中核となりました。その後今庄町役場や公民館として地域住民に利用されています。３階ホールの天井の漆喰模様や舞台上部のアーチやレリーフの漆喰は建築当時の意匠を保存しており、クラシックコンサートも度々開催されています。今庄から敦賀・長浜そしてロシアをつなぐ鉄道の歴史にまつわるストーリーは日本遺産に認定され、近くには土木遺産の北陸トンネルなどもあります。鉄道の歴史を想像する旅にいかがですか？