【学習センター機関誌より】私の修士論文体験  

本記事は放送大学山形学習センター機関誌「ゆうがく」より引用した修士論文の体験談です。

『自閉スペクトラム症(ASD)の児童に対する社会的スキル発達の支援』
~小学校特別支援学級の児童への自立活動における実践を通して~

令和3年度大学院修士課程修了
黒沼 誠さん

修士論文に挑戦した理由

小学校で特別支援教育を担当する教師として充実した日々の勤務を行いながらも、共生社会の実現に向けた更なる取り組みができないだろうかと感じていました。それには、なにより特別支援教育という専門的分野を探究する必要があるとの結論に達しました。そのことは、大学時代の恩師から教師としていずれ大学院で学ぶ必要な時がくると教わってもおりました。
その実現に向けて現在の、職場を離れず、家族と生活しながら研究に取り組もうと考え、そのことが叶う放送大学大学院への入学を希望し、試験を受けました。

研究テーマ

研究テーマは、「自閉スペクトラム症(ASD)の児童に対する社会的スキル発達の支援」~小学校特別支援学級の児童への自立活動における実践を通して~、としました。
社会的スキルとは、「集団行動をとったり、人間関係を構築したりするうえで必要な技能」と定義し、児童への支援をどのように行っていくことが有効なのかを考察すること、併せて人的環境の調整をどう進めていくかを考察することも目的としました。

社会的スキル発達の支援の全体構図

研究に取り組む際のポイント

研究に取り組む中で、皆さんが進めている研究が修士課程期間で完結することもあると思いますし、つい手を広げすぎて完結できないこともあります。皆さんが研究を進める上で大切なことは、この論文で伝えたい骨子を指導教員と相談しながら進めていくことです。
私が修士論文を書いていく過程では指導教員から、研究課題の中で、ポイントとなることを示していただいたおかげで、論文作成に必要となる材料をそろえることができました。
また、それらに加えてアドバイスも適宜にいただきつつ研究を進めることができました。
その他、放送大学のホームページ(OPACシステム)による放送大学図書館での資料探しや放送大学が地元の図書館(東北公益大学等)とも連携していることもあり有効に活用させていただきました。

修士課程に挑戦してみての魅力

修了までの2年間、まさに2020年4月~2022年3月までの期間は、コロナ感染が広がり、大学や学習センターでの対面学習はできませんでした。授業の聴講やレポートの提出は、出勤前の朝の時間を使って取り組みました。3か月毎に行ってきたゼミでの研究の進捗状況を確認し合う機会もリモートでのやり取りで実施され、対面での学習による充実感や教員や同じゼミの方々との交流を味わうことは叶いませんでした。
一方、働きながら学習するものにとっては、聴講などを自分ができる時間に自分で進めることができるのは助かりました。職業柄といいますか、年齢的といいますか、夜の時間に研究を進めて次の日に影響がでてしまうのは本意ではありませんでしたので、自分にあった学習方法として朝の時間に授業を1、2コマ聴講するようにしました。もちろん寝坊してしまう日もありますし、集中しきれない時もありました。それでも、教育や心理の授業で聴講したことを仕事に活かせると実感できたことが、授業や研究を最後まで継続できた理由だと思っています。
学びを通じて、これまでの経験値を証明できる確かな理論となり、実践する中で、確かな手ごたえを感じ取れたことが、修士課程に挑戦してみての魅力であると言えます。

そして、今

現在、学校内での特別支援学級で自立活動の指導を行うなかで、研究してきた成果を活かし授業実践に取り組んでいます。また、インクルーシブ教育の推進や特別支援教育やユニバーサルデザインの教育の推進など学校全体で進めている取り組みでは、同僚の先生方と協力し研究の成果を活かしながら、日々の実践を進めています。
研究により日々の実践とその効果がすぐに見えるということはもちろんありませんが、研究で得たことを活かし日々の教育を着実に進めていくこと、そして研究と実践の間につながりが実感できるということが研究に取り組んだ充足感として大きいと感じています。それらを踏まえて、また研究に戻るという、研究と実践の行き来ができていけるようにしたいと考えています。

研究成果物(小学校の掲示)

修士論文に挑戦するみなさんへ

私の場合は、修士論文を書くというよりは、「作る」という言い方があっているように感じます。もちろん、論文は書くものではありますが、作り上げるというイメージが私にはあっているように思います。自分の学びたいことを掘り下げてみる活動は、他のことでもできると思いますが、修士論文の作成という人に見てもらい審査されたりすることで、それが磨かれて一つの形になるということは代えがたいものだと考えます。指導教員やゼミの仲間もいてくれます。どうぞ楽しみながら取り組んでみてください。
学術研究が、「巨人の肩の上に立つ」ことで成り立っていると言われています。修士課程の経験のなかでは巨人の肩の上に立った景色を見られたように思ったり、研究の道のりや階段が見えたと感じたりすると思います。それらを共有できる仲間が集えば、さらに楽しいものとなるでしょう。
みなさんの真摯な研究が大きく進展しますことをご祈念申し上げます。

山形学習センターの安田所長(左)と発表者の黒沼誠さん(右)

山形学習センター機関誌「ゆうがく」83号(令和4年11月発行)

公開日 2023-04-25  最終更新日 2023-04-25

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