【2022年度教育功績賞受賞者インタビュー】 心理と教育コース 高橋 秀明教授・森 津太子教授

放送大学のライブWeb授業「心理学実験(基礎)」を開発することで本学の教育への高い貢献が認められ、2022年度「教育功績賞」を受賞した高橋秀明教授と森津太子教授にお話を伺いました。

高橋秀明教授
森津太子教授

お二人のご専門について教えてください。

高橋:頭や心の中がどのようになっているのか?を研究する認知心理学を専門としていますが、そもそも頭や心とは一体どこにあるのか?といったことを研究する生態心理学にも興味を持ってきました。また、現代は情報化社会ですから、情報やメディアという外界と頭や心の中で考えることとの関係について研究するということで、情報生態学という言い方もしています。ウェブ会議システムを用いた授業も、頭の中の問題と外界のツールとの関係として、情報生態学の観点から捉えることができると思います。

森:私の専門は、人間の社会性について研究する社会心理学です。人間は、他者と協力しあうことで大きな力を発揮しますが、そのためには協力相手を見きわめる必要があります。また反対に、自分も他者から協力相手として評価されなければなりません。私はそうした他者の認知や他者からの認知について研究しています。これは、高橋先生がご専門としている認知心理学との境界領域で、社会的認知と呼ばれています。実験研究を行うことが多く、そこではさまざまな情報機器を使用します。これも高橋先生と共通する点で、今回のライブWeb授業を制作するにあたりその経験が役立ちました。

ーライブWeb授業「心理学実験(基礎)」を開発する際、面接授業と比較して大変だったことはありますか?

森:そもそもこの授業は、実習という位置付けです。以前からオンライン化を望む声はありましたが、心理学実験は「対面」で行うのが当たり前でした。それがコロナ禍で状況が一変しました。まずは対面授業の代替としてオンライン化を進めましたが、せっかく作るのなら平時でも継続して開設できる科目にしたいと思い、対面授業と同等以上のクオリティになるよう配慮しながら制作しました。

高橋:そうですね、気を使う点は多々ありましたが、今まで対面授業でやってきたことを振り返って検証する機会にもなりました。つまり、対面とオンラインという2つの条件下で比較するという実験を行う機会になったという意味で、興味も増えました。そういった意味で、私は「大変さ」よりも「楽しさ」を感じていましたね。

森:確かに、高橋先生も私も普段から実験研究をしていますし、新たな情報技術を試すことも好きなので、その点では楽しかったです。それにこの科目の開発には、私たち以外にも多くの人が関わっていて、関係する職員の皆さんには本当にお世話になりました。この「みんなで一つのものを作り上げていくという感覚」は、「大変さ」をはるかに上回るものでした。

面接授業の「心理学実験」は1単位でしたが、ライブWeb授業では2単位になっていますね。どのようなことが加えられているのですか?

森:面接授業は8回の授業で1単位ですが、ライブWeb授業では15回で2単位になっています。そして15回のうち7回分はオンデマンド、残り8回分がZoomで行う同時双方向の授業というところがポイントです。放送大学のライブWeb授業の中でも、この形式を採用しているのはこの科目だけです。対面授業の8回と比べ、単純に時間が増えただけでなく、授業の内容に応じて、同時双方向とオンデマンドに区割りすることで、いっそう効率がよくなりました。

高橋:それから学生同士がレポートを相互評価できるようになるなど、今まで面接授業ではできなかったことも加わって内容が充実しました。教員にとっても、学生にとっても経験が増えるのは良いことですよね。

ー講師の方々への対応に難しさはありましたか?

森:「心理学実験(基礎)」を本格的に運用するのは今学期(2023年度第1学期)からです。しかし、ベースとなった面接授業「心理学実験1〜3」をコロナ禍で急遽ウェブ開講したときは、担当講師も私たちもオンラインで「心理学実験」の授業をするのは初めてで、試行錯誤しながら実施していった感じでしたね。

高橋:そんな中でも学生達はこちらの期待以上にがんばってくれました。対面授業ですら、すべてを伝えるのは難しいのですから、オンライン授業も経験を重ねていくしかないと思っています。

今後はどのように発展していきそうですか?

高橋:基本的には、どんどん革新的な技術を取り入れていきたいと思っていますが、まずは、先生方からのフィードバックを参考にブラッシュアップしていくことになりますね。

森:将来的には、ひとつの科目の枠を超えた発展も視野に入れています。たとえば、ある授業の中で学生たちが実験して得たデータを別の授業で利用したり、研究に活用したりする、というアイディアを高橋先生と話していたところです。ただしばらくは、科目のブラッシュアップに力を注ぎたいと思っています。

最後に、心理学に興味がある皆さんへメッセージをお願いします。

高橋:心理学は、皆さんが日ごろ抱いているさまざまな疑問や問題意識にアプローチすることができますので、卒業研究や大学院の研究にトライしてほしいと思います。

森:「心理学実験」の受講を通じて、心理学の研究を研究者の視点で見てもらえるようになると嬉しいです。

高橋 秀明 教授のプロフィールはこちら

森 津太子 教授のプロフィールはこちら

公開日 2023-04-25  最終更新日 2023-04-25

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