銀河の美しさに魅せられて 天文学に目覚める

No.126号(2018年7月)掲載記事。
宇宙年齢138億歳──。
壮大かつ深遠な宇宙は、近年、望遠鏡の観測能力の向上に伴い驚くほど理解が進んでいます。そこで今回、銀河研究の第一人者である谷口義明教授に、天文学の魅力から、今こそ知りたい美しい銀河の謎までお話をお聞きしました。

谷口義明教授
谷口 義明 教授
自然と環境コース/自然環境科学プログラム

PROFILE
北海道生まれ。放送大学教授。専門は観測的宇宙論。東北大学助教授、愛媛大学教授、同大学宇宙進化研究センター長などを経て現職。近著に『天の川が消える日』(日本評論社)。

天文学への誘い美しいものをもっと知りたい

子供の頃、僕は昆虫少年だったんです。

蝶もクワガタも見ていて美しいですからね、昆虫採集に夢中になってしまって。

ところが、中学生のある日、天文ファンの同級生が持っていた月刊誌「天文ガイド」をたまたま見たことで、宇宙への興味が一気に芽生えていきました。

アンドロメダ銀河やオリオン大星雲……。どうしてこんなに美しいものが宇宙にあるのだろうと、不思議な魅力にとりつかれてしまったのです。

それで、高校では天文部に入って観望会をしたり。大学も当初は法学部を志望していたのですが、美しいものへの憧れ、宇宙への好奇心が捨て切れずに、文系から理系へ転向。

東北大学理学部に進学して、天文学を学ぶことになりました。

とはいえ、当時、1970年代から80年代頃は、宇宙の歴史はまだまだ正確に解明されていない時代で。

天文学が学べる日本の大学も、全国に3校しかない。大学と大学院を修了して天文学者になろうとしても、就職先がほとんどないというのが実情だったのです。そんな中、32歳のときに、奇跡的に職を得ることができました。

128億光年の彼方にある未知なる銀河を発見

天文学者となってからは、「銀河の誕生と進化」を主に研究してきました。

1995年に、ESA(欧州宇宙機関)が、「赤外線宇宙天文台」を打ち上げたときは、日米の合同チームが作られ、僕がリーダーとなって、「ディープサーベイ(深宇宙探査)」を行いました。

そのとき、長い露出時間をかけて観測し、誰も見たことがない、いちばん遠方にある、生まれたての銀河を発見しようというプロジェクトに挑んだのです。

ところが、衛星打ち上げ後、感度が少し落ちていることが発覚し、4つの天域を探す計画から、すべての観測時間を1つの天域に投入せざるを得ない状況に追い込まれました。

しかも、これは非常にリスクが高い戦略で、うまくいくかどうかは運次第。

ESAの人たちからも「日本人はクレイジー!」とまで言われましたね。でも尻込みせず挑戦したら、結果は大成功。100億光年彼方の銀河を検出できたのです。

その後、今度は口径8メートル級の「すばる望遠鏡」を使って、さらに遠い天体の観測に挑戦しました。「すばる望遠鏡」の能力が非常に高く、2003年には、人類史上初、128億光年彼方の銀河を発見しました。つまり、128億年前の銀河の姿を見ることができたのです。

どうして過去の銀河の姿を見ることができるか──というと、光の速度が、秒速約30万キロメートルで有限だからなのです。

1億光年離れた天体が放つ光は、1億年かけて地球に届く。だから、遠くの天体を観測することで、宇宙の歴史を調べることができるのです。

現在、宇宙年齢は138億歳。ここ十数年の宇宙観測技術の進歩は著しく、今や134億年前の銀河まで観測されています。がんばれば、宇宙最初の銀河の姿も見られると思いますね。

ところで、宇宙には1兆個もの銀河がありますが。銀河の中心に超大質量ブラックホールがひそんでいて、ひときわビカビカ輝いている銀河があるんです。「メシエ77」と呼ばれている渦巻銀河も、そのひとつで、見かけ上は普通の銀河なのに、中心核から強烈な光を出している。では、なぜ激しく光っているのか。この謎も、僕の長年の研究テーマのひとつでした。

これはですね。周囲のガスが強い重力で引っ張られて、巨大ブラックホールの中に落ち込むことで、強力なエネルギーを放出して光っている。つまり重力発電をしているんですね。それにしても、なぜ効率的にガスがブラックホールに落ちるのかが分からない。そこで僕は、巨大ブラックホールに他の銀河がのみ込まれて合体したため、重力発電が活発化した──という論文を約20年前に書いたんです。でも、銀河は孤立した存在で合体しないという説が強くてね。

しかし今回、大口径で超広視野の「すばる望遠鏡」を使って「メシエ77」を観測したところ、ようやく銀河が合体していた痕跡を発見することができました。その研究成果は、2017年秋に発表しました。

やはり銀河というのは、合体する運命にあるんです。重いものは2つあると引き合うので。じつはアンドロメダ銀河も、秒速100キロメートル以上で、私たちが住む天の川銀河に近づいてきているんですよ。このまま進むと、60億年後には、アンドロメダ銀河と天の川銀河が合体して巨大銀河になってしまう。詳しくは、僕の近著『天の川が消える日』で紹介しています。

好きこそ物の上手なれ生涯教育としての天文学

谷口義明教授

さて、天文学に興味をもつ大人には2種類あって。天文学をほとんど学ばずに大人になった人。また、天文学を学びたかったけれど、できなかった人。そういう2種類の方がおられると思うんですね。で、僕の授業は、どちらもウエルカムです。いろんな方がいていいんじゃないかな。授業では、僕の専門分野の観測的宇宙論に限らず、天文学全般について学べます。

また、僕のところに来てくれれば、ニーズに合った勉強場所や指導教官、さらに他の学科の先生まで、紹介することができます。ですから、何も心配することなく、まずは試していただきたいです。

やはり勉強の基本は、「好きこそ物の上手なれ」ですからね。天文学への好奇心がある方は、ぜひ学んでほしい。しかも放送大学の場合は入試がないですから。また大学院で論文を書こうと思う方は、好奇心に継続力と集中力をプラスして、ひらめき力を発揮していただければと思います。

僕自身も、宇宙という、まだまだ無知なる領域を、学生の皆さんと一緒に楽しみながら学んでいければと思っています。

谷口義明教授の研究室内の書棚には天文学書や教授の著作が多数。

研究室内の書棚には天文学書や教授の著作が多数。

史上初、132億光年先の銀河で酸素を発見!

南米チリにある世界最大の電波望遠鏡であるアルマ望遠鏡を使って、132.8億光年彼方にある銀河で酸素を見つけたと、大阪産業大などの国際チームが発表しました。この研究成果は、イギリスの科学誌『ネイチャー』2018年5月16日号に掲載され、谷口教授も、研究チームの一員として、論文に名を連ねています。

くわしくはこちら https://alma-telescope.jp/news/press/oxygen-201803

公開日 2021-02-26  最終更新日 2021-02-26

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