【学習センター機関誌から】 論文発表会

新潟学習センターにて、同窓会総会終了後、3名の論文発表会を行いました。


製造業における品質不祥事研究

2022 年度 大学院文化科学研究科(修士課程)
社会経営科学プログラム修了 大山 芳郎

1.研究のテーマと動機
研究テーマ:「製造業における品質不祥事研究」
 製造業に従事する私は、勤務先の品質管理責任者を任されるような立場となり、日々の問題解決や将来計画を立案する立場となりました。今までの経験や知識で従来型の課題は解決できるものの、「品質不正」「品質不祥事」といった今まで経験したことのない新しいリスクに対処しなければならないと常々感じていました。
 しかし、この分野において、社会的に広く報道されているものの、さまざまな情報が錯綜しており、そもそも「品質不正」「品質不祥事」といった言葉の定義すら定まっていないことがわかってきました。現状、学術的にも実務上でも正しい知識を得ることが容易にできない状態となっているため、自分で学ばなければならないと感じ、自分で学び、研究していくことで直面している不安を払拭したいとの考えに至りました。

2.研究内容
 日本の製造業で発生している品質不正と呼ばれる不祥事(以後、品質不祥事)について調査を行うものです。日本の大手企業で相次ぐ品質不祥事が報道されているが、どのような経緯によって引き起こされてきたのか本研究を通して明らかにしていきました。
 品質不祥事の背景には、コスト重視・品質軽視の経営が強まり、現場の疲弊が進むなかで、倫理の低下、現場力の劣化が重大な不祥事を引き起こされていると指摘され、製造業の品質劣化について多く議論されている。品質不祥事がどのように誘引されてきたのか、昨今になってなぜ相次いで公表にいたるのか、品質不祥事は解決にむかうことができるのか考察を進めていきました。

3.所感
 研究を進めていくなかで、悩み、不安、驚き、感動など多くの葛藤がありました。しかし、担当教授とゼミ仲間に支えられて一定の成果に結びつけられたことは望外の喜びです。また、新潟学習センターにて「論文発表会」という機会をいただけたことに感謝いたします。


「地域を見守る力の充実から子育て支援を考える-主任児童委員の立場から-」

2022 年度 大学院文化科学研究科(修士課程)
生活健康科学プログラム修了 Y・H

 先日は、論文発表の機会を頂き、ありがとうございました。本日は、論文の要旨と論文に取り組んでの所感・謝辞を述べます。

論文の要旨
 近年のいじめ・不登校・貧困・虐待等の問題は、家族機能、地域社会の福祉力の低下が背景にあるといわれている。
 民生児童委員の中から厚生労働大臣より指名された「主任児童委員(筆者は拝命後 7 年経過)には何ができるのか」を問いとした。子育ての実態を把握するため、N町の子育てをしている保護者を対象に、調査を行なった。結果を分析し、結論を見い出し、新たな提案を加えた。
 「地域を見守る力の充実」は主任児童委員の資質の向上ととらえた。主任児童委員の役割は「つなぐ・つながる」である。住民が必要としている支援をサービスにつなぐ・住民の声を地域や行政につなぐ・住民同士をつなぐ・主任児童委員同士でつながる・ネットワークでつながる。
 現在、広がりつつあるネットワークを活用し、不足する支援を考えていく。
先進的に取り組んでいる地域を訪問し学ぶ予定であった。しかし、コロナ禍のためその機会が失われた。今後の課題としたい。

論文に取り組んで
 自分にもまだエネルギーがあることに気づいた。「何でもやってみよう」と新しいことに積極的な気持ちで向かうことが多くなった。学位記授与式に全盲の方が「どんな環境でも学ぶ意志さえあれば学べる」と謝辞の中で述べられた。まさにその場が放送大学ではないか。私は深い感銘を受けた。

謝辞
 指導教授の山田知子先生、研究計画・志望動機・パソコン操作・英文読解の指導をしてくださった学習センターの先生方、親切に対応してくださった事務室の皆様、勉強会等で励ましの言葉をかけてくださった学生の皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。


「竹取物語」における対象喪失と悲哀の仕事についての一考察

2022 年度 教養学部
心理と教育コース卒業 高橋 浩美

 竹取物語はハッピーエンドではないのに古代から語り継がれる魅力は何か、それは物語に喪失や悲しみというテーマが存在する為ではないかと考え、研究に取り組むことにした。
 現代の私たちが対象を失い悲しむ過程は、対象への愛着を断念して“意味”という橋を架け人生物語を作るという方法である。一方、竹取物語の背景となった時代は閉塞的な社会情勢にあり、逃れられない運命の中で不運な人生を送る人が多かった。そのような時代を生きた人々の心の闇が地上と異界を繋ぐ物語を作り上げた事、そこには人々の月への信仰心や迎えの発想が深く関わっていた事も明らかになった。その結果、かぐや姫が帝に送った歌にある“あはれ”という表現が神仏による“あわれみ・慈悲・憐愍”と重なるのではないかという考えに至った。八方ふさがりの状況を物語に投影することで悲しみ・苦悩を表現しながら、同時に“あはれ”という神仏の慈悲の情に託して救いを祈るという、これが当時の人々の悲哀の仕事だと導いた。自力では到底果たす事ができずに彼岸を見つめ超越的な存在に想いを馳せ祈ったであろうことから、これを他力の原理にある悲哀の仕事と名づけた。すなわち、神仏を頼みとして果たそうとする過程であった。
 物語最期に一国の天子である帝が一地上人に留まるという決心をし、不老不死の薬を燃やす場面がある。これを仏教信仰が貴族から庶民へと降りてくる予兆であると解釈した。悲しみが満ちる果てに「竹取物語」が生まれ、その結果、信仰の民衆化がもたらされるというストーリーがこめられており、ここに「竹取物語」が古代から継承されてきた理由を垣間見た。
 研究を進めていく中で竹取物語が仏教思想に関連しているという仮説が導かれ、非常に魅惑的で有益な経験であった。


新潟学習センター機関誌「松籟(しょうらい)」143号(2023年7月発行)より一部編集して掲載

公開日 2023-10-24  最終更新日 2023-10-24

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