2024年度 新任教員のご紹介

人間と文化コース

小二田 章 こにた あきら

准教授

なんで「歴史」は書かれるのだろう?

子供のころ、人形劇とゲームから『三国志』に興味を持ったことに始まり、中国の歴史と物語の間を行ったり来たりしながら、大学で12世紀宋代の歴史を卒論のテーマに選び、研究の道に入っていきました。大学院生になって研究のテーマを考えていた時、宋代に始まり、現在も中国全域で編まれている「地方志」という書物が面白くなり、いろいろ考えてきました。

「地方志」は、ある行政領域(日本でいう所の都道府県)について、行政・地理・経済・文化などを歴史的に述べる書物で、だいたい行政府が主催して編まれます。中国の影響を受ける漢字文化圏の東アジア地域には、日本の「〇〇県史」「〇〇市史」のように、同じような書物があります。

最近は、東アジア、さらには世界的にある「地方を描く書物」を「地方史誌」というように定義し、それらの成り立ち・影響・比較を考えています。

18世紀清朝の学者・章学誠は「地方志も史書である」との旨を述べましたが、ではなぜ「(地方の)歴史は書かれる」のでしょうか?「地方史誌」の「歴史」を考えながら、この歴史研究(あるいは「人間と文化」)の難問を一緒に考えていきたいと思います。


心理と教育コース

小林 祐紀 こばやし ゆうき

准教授

子どもにとって良い授業とはどんな授業なのか

わたしが生涯かけて追い求める問いです。

子どもにとって良い授業を実現する際に、使う道具は問いません。良いと判断できれば何でも使います。今、わたしが関心を寄せているのは「テクノロジ」です。

ここでいうテクノロジは、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を指すだけではなりません。クラウド環境や整備が進む学習者用デジタル教科書、プログラミング等も含みます。

さらに、テクノロジが活用される授業デザインやカリキュラムも大変重要です。当然ですが教師の指導や子どもたちの学び方も重要となるでしょう。

授業については、子どもたち一人一人が「教えられた」よりも「学んだ」と実感を持つことが大切です。さらに、自分ごととして取り組む授業の実現には、子どもたちに「情報活用能力」と呼ばれる資質・能力が備わっていることも欠かせません。

子どもにとって良い授業のあり方やどのような成果や課題があったのかについて、学校現場と連携しながら研究をすすめてきました。そしてこれからも続きます。

放送大学では「情報活用能力」「教育実践研究」「カリキュラム」等をキーワードに授業を担当していく予定です。


心理と教育コース

高梨 利恵子 たかなし りえこ

准教授

自分が自分のセラピストになる

私は臨床心理学の修士課程を修了したのち、主に精神科病院・クリニックで患者さんに対して、心理療法や心理検査などの業務を通じて精神疾患の回復を支援してきました。しかし、心理専門職として精神科の病気にかかわるということは、単に病気の症状をなくすだけでなく、その人の生活全体、そしてこれまでの育ちや歴史、さらには今後どのような人生を生きていくかにかかわるという仕事であり、何をどこまでやれば、専門家として本当にその人の役に立つことができたと言えるのだろうか、という疑問が常にありました。

そのようななか、心理療法の一つの方法である「認知行動療法」に出会い、その効果検証をする研究にも従事するようになりました。認知行動療法は、効果検証の対象となる病気の症状をなくすことを目指すと同時に、それを受けた人自身が、病気を始めとした様々な困難を乗り越えていくスキルを身に着けて、その人らしい生き方を切り開いていくことを支援する心理療法です。つまり、疾患の治療を通して、患者さん自身が、自分自身のセラピストになることを支援するのです。臨床心理の専門家として、その人の抱えるすべての困難や苦悩についてかかわることはできないけれど、このような支援によって、人々の役に立つことができるのではないかと考えるようになりました。

我々が生きていく中で様々に生じてくる事柄に対して、柔軟で積極的に向き合う力をもたらしてくれる認知行動療法を、皆さんと共に学び、発展させていたいと考えています。


人間と文化コース

船岡 美穂子 ふなおか みほこ

准教授

美術史を学ぶ楽しみ

西洋美術史、特に18世紀フランスの美術を専門に研究してきました。17世紀以来、中央集権化が進んだフランスは、ヨーロッパ随一を誇る大国となり、政治のみならず文化の中心地として、各国に影響を及ぼしました。華麗で優雅なロココ文化が展開した一方で、啓蒙主義を背景として、自然や真実を追求する理性も重んじられました。近現代へと継承される、アカデミーや展覧会、美術館といった諸制度が徐々に整えられ、やがてフランス革命期を経て再編されるなど、目まぐるしく変転した激動の時代でもあります。作品に観察される多様な造形表現を、こうした歴史的・社会的文脈を踏まえながら分析することに関心を持っています。

人文学は、一見したところ、実学から離れているかのように思われるかも知れません。しかし、過去の芸術や文化は、確実に現在へとつながっており、ときには人生を変えるほど大きな意味を持つことがあります。私自身も大学で美術史という学問に出会って以来、追いかけ続けてきました。

書物やインターネットなど、室内にいながらにして素晴らしい作品と出会うことも可能な時代ですが、いろいろな場所にぜひ足を運んで、実物の作品に接することをおすすめします。

放送大学の先生方、そして様々な分野で経験を重ねてこられた学生の皆さまと一緒に、芸術鑑賞を楽しみ、研究と学びの喜びを深めたいと思っています。

公開日 2024-09-20  最終更新日 2024-09-20

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