オンライン教育の現状

放送大学でも2015年度より導入しているオンライン授業。

今年は、新型コロナウイルスの影響で、注目度がさらに高まっています。

インターネットを介することで変わっていく学びのスタイルや今後の可能性について、放送大学 オンライン教育センター長 近藤 智嗣 教授に伺いました。

近藤 智嗣 教授

PROFILE
放送大学オンライン教育センター長、情報コース教授。
専門は、バーチャルリアリティ、展示学。
現実とバーチャルを融合する「ミクストリアリティ」という技術を教育に応用する研究開発。

オンライン授業では 何ができるのか?

オンライン授業は、現在はおよそ60科目を開講しています。卒業要件124単位中20~30単位は面接授業で取ることになっていますが、オンライン授業はこれに置き換えることができます。

もともと放送大学は放送による映像授業が主体ですが、オンライン授業は、そうした映像授業に加え、1回の授業ごとに実施する小テスト(*1)の解答や解説をその場で得られたり、レポートをその場で送信できたりという、インターネット上の「双方向性」という大きな特徴があります。

例えば「河川環境シミュレーション」を扱う授業(*2)などでは、Webサイト上でシミュレートしたデータをダウンロードし、それを統計解析したレポートを提出するといった今までの放送授業ではできなかったことが可能になりました。

さらに大きな相違点として、学生同士でディスカッションを行える点が挙げられます。

講師がテーマを出して学生同士が議論するので、「学び合い」が生まれるという特徴もありますね。

このディスカッションは、リアルタイムのチャットではなく、掲示板を使ったフォーラム形式(*3)で行われています。興味深いのは、ひとりの学生が出した疑問点について、講師が反応する前に他の学生が答えたりすることです。

学生同士で“新しい学び方”を切り拓いている印象を受けます。放送授業では、講師の講義を聞き印刷教材を読むのが一般的な勉強のスタイルですが、オンライン授業では自分が調べたことや体験したことを学生同士でお互いに学び合っていくスタイルも可能になってきています。

学び方そのものが変わってきているように感じます。


*1 オンラインの小テスト

*2「 河川環境シミュレーション」での画面
S. Mayama, Tokyo Gakugei Univ.
K. Kato, S. Seino, H. Omori, Univ. Tokyo

*3 学生たちがディスカッションする掲示板

学生同士の交流で 学習をより深く

オンライン授業では「学習内容をただ覚える」というだけの勉強ではなく、意見交換に参加するなど、より積極的な姿勢が必要になります。現在実施しているオンライン授業の中には数百人の学生が受講する科目もありますが、そうした場合は適正な人数にグループ分けをしてディスカッションを行うことになります。

単位認定の際は、授業中の小テストやレポートの内容はもちろんのことですが、このディスカッションも評価対象の科目もあり、総合的に評価されます。これまでのように学期の終わりに1回のテストで評価する形式ではなく、学んでいる期間すべての成果を評価する方式になっているのです。

授業内容の更新という点では、オンライン授業は、学期ごとに細やかな授業内容の改訂が行えるところも利点です。


講師の話す姿と教材フリップのマルチ画面

コロナ禍で変わる 学びのスタイル

2020年の1学期は、対面形式の面接授業がすべて中止となりました。

しかし、面接授業が卒業要件だった学生が無事に卒業できるよう、今後の授業形式について執行部で検討が重ねられました。

そして、Web会議システム等を使う形式、従来のオンデマンド形式、ハイブリッド形式で対応するという結論に至りました。具体的には、7月1日から8月2日までの間に80科目ほど開講するという計画です。

放送大学は、基本的に放送を見て勉強する「非同期型」(*1)と呼ばれるスタイルでしたが、学生と教員がリアルタイムで実施する「同期型」(同時双方向)がいよいよ実現するわけです。

実は、この「同期型」は開学前の計画にも盛り込まれていたそうですが、実際には「非同期型」になったという経緯がありました。

それがこの新型コロナウイルスの影響で一気に変わったのです。収束後も、このスタイルは定着させていきたいと思っています。

もちろん現時点では、大学として今後の方向性が定まっているわけではなく、今回は、あくまでも緊急事態としてこの方式を採用したわけです。学生にしても教員にしても初めてのスタイルですので、まだまだ工夫や慣れが必要です。

そのために現在、教員を対象とした勉強会が始まりました。学生を対象とした体験会等も順次開催していく流れになっています。

今回の緊急事態を経て、平常時にも活用可能との結果が出れば、放送大学の学びにおける“4番目のスタイル”として定着していくでしょう。

ICT(情報通信技術)で 未来はどうなる?

昔、放送大学の広報で「自宅がキャンパス」というキャッチフレーズがありましたが、放送大学は、そもそもが自宅学習のスタイルです。

ですから、緊急事態宣言下でも対応可能です。しかし、先ほどの面接授業や単位認定試験は慎重に対応しなければなりません。

特に試験については、今期に限り自宅で受験できるよう変更せざるを得ませんでした。ですが、このことについても以前から構想があったのです。

試験期間中であれば、いつでも学習センターで試験が受けられる仕組みや、学習センターまで行くのが難しい学生が自宅で受けられる仕組みを増やしていくべきだという議論があり、試行的なことから進めています。

今学期の試験は、郵送で行いますが、将来的にはインターネット環境がある場合には、学習センターに行かなくても受験できる仕組みになっていくと思います。

専門的な話になりますが、「CBT(Computer Based Testing)」(*2)というものがあります。

これはコンピュータを利用した試験方式のことです。自宅で受験中にほかのWebページを開けなくするシステムなどもありますので、適正な試験を行えます。放送大学が基準とする「厳格な試験」を維持しながら、あらゆる人にとっての利便性を向上させることが可能になっているのです。

また「LA(Learning Analytics)」(*3)と呼ばれる学習履歴分析も、この数年、議論されているものです。

オンライン授業では、これまでの受講者の学習履歴などのデータが蓄積されていますので、それらを解析して、学習・教育の向上のために活用していこうというのが「LA」の考え方です。

例えば講義映像のある時間に多くの人が視聴をやめていたら「これは内容に問題があったのではないか?」と制作にフィードバックできます。また、つまずきの多い箇所でより丁寧な解説を加えるなど、より良い学習環境づくりに役立ちます。

今はまだ研究開発中ですが、今後1年以内に、その一部でもスタートさせていけたらと思っています。

技術からサービスへ。 広がるヒトの輪

今回はオンライン授業をメインにお話しましたが、対面形式の面接授業には、各地域に密着した魅力的な授業もたくさんあります。

放送大学の良いところは残しながら、新しい技術を取り入れ、学生、講師、スタッフの全員のために常に向上していくのが放送大学の良さだと思っています。
また、面接授業の代替措置として、Web会議システムの利用など、その変化に戸惑いを感じている方や、インターネットに接続できない環境で困っている方もおられます。放送大学は、決してそのような学生を切り捨てることはないということをお伝えしておきたいと思います。

まず、放送授業は今までと同様ですし、緊急事態宣言の解除により、学習センターにも通えるようになってきましたので、学習センター内の設備を用いてWeb会議システムによる授業を受けることも可能です。

また、学習センターでは、さまざまなパソコン系のサークルが活動しています。同窓会・学友会という組織もあります。

私たち教職員も頑張りますので、これを機に新たなスキルへの挑戦もしていただきたいと願っています。

これからの時代は、教員も学生も次々と新しいことにチャレンジしていかなくてはならないでしょう。そうすることでお互いに学び合い、学習の幅を広げていけるものだと思います。

そのためにも、今ある技術を如何にサービスとして提供できるかが課題です。コミュニケーションの場をオンライン上でも広げていければと思っています。

公開日 2020-07-30  最終更新日 2020-12-17

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