放送大学が採用する「デジタル認証バッジ」の可能性

放送大学でも一部の講座で取得が可能になった「デジタル認証バッジ」ですが、それが一体どのようなものか、今回は、教養学部情報コースの山田恒夫教授に、その仕組みや可能性について詳しく解説いただきました。

山田 恒夫 教授

PROFILE
放送大学教養学部情報コース/文化科学研究科情報学プログラム教授。専門は、情報学、教育工学、学習心理学。学習・学術コンテンツの開発・共有・流通・電子出版、情報教育、OpenEducationなど、情報と人間・教育との関わりを広く研究。

学びをデジタルで証明

デジタル認証バッジ(以下:デジタルバッジ)とは、「電子証明書」の一種です。

教育の分野で発行される証明書は、卒業証明書、学位記、成績証明書、各種のプログラムや講座の修了証などがありますが、これらを従来の紙ではなく、偽造が困難なデジタルに置き換えた形式で発行したものがデジタルバッジです。

こうした証明書の偽造が欧米諸国では深刻で、それもデジタルバッジ登場の背景となっています。

もう一つの役割として、その獲得や利用がモチベーションとなり、学習を活性化するという点も挙げられると思います。

デジタル化により、自分の能力や資格、業績や成績等をさまざまなソフトで可視化したり、改ざんの有無を即座に確認できます。また発行の手間も軽減されるため、科目や修得スキルごとの発行も可能となり、新たな価値の創造が期待できます。

デジタルバッジは教育機関の垣根を越えたシステムとなるため、文部科学省の目指す「公正に個別最適化された学び」の先を行く仕組みとなり得るでしょう。

自分の学びは自分のもの

デジタルバッジは、まず「自分で管理できる」という点が大きな特徴です。

生涯学習等で複数の教育機関を利用した場合、それぞれの機関のデジタルバッジをもらうことになりますが、多くのデジタルバッジは共通の技術標準で作られているため、まとめて管理することが容易です。

ひとたび受領すれば、入学試験や就職活動などの際に、その都度発行してもらう必要はありません。

自分が保有しているデジタルバッジを電子メールで送付したり、SNS等で公開することも可能です。既に、国際的に普及しているビジネス特化型SNS「LinkedIn(リンクトイン)」などでは、デジタルバッジの公開が一般化しています。

そもそも「自分の学びは自分のもの」なので、その証明書を教育機関で管理するより、自分で管理する方がより好ましいですし、そういう意味で、リカレント教育、生涯学習といった学び方に適したシステムでもあると思います。

つまり、学習履歴証明の在り方を変える、あるいは教育の在り方、人材開発の在り方を変えるといった変革にデジタルバッジが大きな役割を果たすというわけです。

放送大学がリーダーシップを

日本国内では、まだ黎明期とはいえ、いくつかの事例が報道され、急速にデジタルバッジの普及が進んでいくものと見ています。

既に発行、または活用している具体例を挙げますと、海外製のLearning Management System(学習管理システム)の多くは、放送大学で発行するデジタルバッジが採用している〈IMS Global〉の技術標準「Open Badge V2(OBv2)」に対応しており、コースを修了したら、自動的に発行される仕組みが整っています。

また、外資系のコンピューター関連サービス企業でも、社内の人事評価や研修システムに用いられるなど、教育機関だけでなく、さまざまな分野で運用が始まっており、これまでの学位取得を目的とした学び方から、よりカスタマイズされた高等教育が実現しつつあるように思います。

放送大学でも、生涯学習の中核機関として、デジタル・トランスフォーメーションの先導機関を目指すべく、さまざまな模索が始まったところです。

放送大学の特徴である「リカレント教育への対応」「他の教育機関との単位互換」「単位ごとの授業料納付」などは、実はデジタルバッジが触媒となる新たな認証システムと相性が良いと思うのです。

これを機に、学位取得を目指す教養教育遠隔大学という特色に加え、能力評価をベースにした、いわばリカレント教育におけるリーダー的存在としても認められるようになりたいです。


デジタルバッジが交付される「放送大学キャリアアップ支援認証講座」

講座の修了者に交付される本学のデジタルバッジ

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