インターネット配信公開講座の現状と今後

2020年5月からスタートした「インターネット配信公開講座」。

生涯学習支援番組から「キャリアアップ支援認証制度」に係る講座まで、必要な時にいつでも始められるフレキシブルな学習法として、さまざまな活用が期待されています。

その特性や今後の可能性について、岡田 光正 副学長に伺いました。

岡田 光正 副学長

PROFILE
放送大学副学長、教養学部社会と産業コース教授。学習教育戦略研究所所長。専門は、環境化学工学、生態工学。

研究分野は、上下水や廃棄物処理システム開発や自然生態系の保全・再生手法の研究をベースとした、環境政策、環境影響評価など。広く環境問題の解決、関連する法律や社会の在り方を研究。

インターネット配信公開講座スタートの背景

放送大学はBS放送で全国無料放送を行っています。

BS231チャンネルでは、単位認定を前提としないさまざまな学びの機会を提供する番組、BS232チャンネルでは、放送大学に在籍する学生の授業科目の単位取得を目的とした授業番組を放送しています。

インターネット配信公開講座の開始は、「BS231チャンネル(以下ch)」の経緯に遡ります。BS231chは、生涯学習やリカレント教育を意識した番組を放送するチャンネルです。

リカレント教育というのは、一度社会に出た人が、教育機関に戻って学び、再度新たな社会に出て行くといった「循環教育」、「学び直し」などと表現されるもので、放送大学の学生だけでなく幅広い層の人を対象にしている点が特徴です。

例えば、データサイエンスを勉強したい人がいるとして、今50歳だったとしましょう。すると、その人が10~20代で大学生だった頃には、まだそうした科目も学科も存在しなかったという事実があります。

このように、時代の変化に応じて新たな学びを必要とする人というのは、幅広い範囲に存在するということなのです。

若いときに同じ分野を勉強していても、卒業してから10年、20年となれば、内容も随分と進化しています。そうした「学び直し」に活用できるツールとして、「BS231ch」を始めたことが、起点となります。

もともと放送大学の目的として「生涯学習」がテーマとしてありますが、この「BS231ch」の特徴の1つは、大学で専門的に勉強した人でなければ理解できないような高度な講座も放送されているという点です。

その理由は、“放送大学は博士課程まである正規の大学であり、高度なレベルの教育があってしかるべき”という、期待を込めた思いがあるからです。学生はもちろん、企業でその分野に携わっている人、さらには専門家・研究者たちにも視聴してほしいと思っています。

仮に、細かい点まで理解できなかったとしても、その学問の最先端が今どうなっているのか、または、その学問の可能性といったことがわかるような”体験“を提供しているのです。

しかし「BS231ch」ですと、テレビの視聴だけで終わってしまうという悩ましさもありました。

つまり、せっかく多岐に渡る番組を作っているのに、もっと多くの人に見てもらわなければ“もったいない“ということです。

そこで、これらをインターネットで配信しようということになり、インターネット配信公開講座が誕生しました。

インターネット配信公開講座
https://aoba.ouj.ac.jp/rpv/external/sso.aspx?type=provisional_login&id=temp_user


「BS231ch」の講座や企画番組を本学のホームページより配信

学習成果をスキルにつなげるインターネット配信公開講座

インターネット配信公開講座のもう1つの大きな役割として「キャリアアップ支援認証制度」があるといえます。

インターネット配信公開講座も、BS231chも、基本的に誰もが学習できるツールですが、ただ「番組を見ました」というだけでは、その人が本当に理解したか、学習したのかということがわかりません。先ほどお話ししたように、リカレント学習においては、学習成果の証明を必要とする人も多いわけです。

例えば、「就職や業務で必要である」など何かしらの目的があって学び直すケースもあります。

きちんと勉強をした上で、確実に理解したのだという事実をもって、ある種の資格として活用するケースは今後増えていくと思います。

特に、在宅時間が増えているこの時期に、自宅でコツコツと勉強をして新しい職業にチャレンジしたい、という人もいるでしょう。

そうなれば、その成果を証明できる認証がほしいというのは当然のことです。

そこで、世間で信頼できる認証を発行するにはどうしたらいいだろうかと考えました。そして導入したのが「デジタル認証バッジ」(*1)なのです。

今、開講している「小学校プログラミング教育導入編」や「Scratchプログラミング指導法」などは、小学校の先生達に向けた講座ですから、その先生が「小学生に教えられる知識を得ましたよ」と証明する必要があります。

インターネット配信公開講座の出題機能と連携したCBT(*2)を会場でコンピュータを使用して実施するんです。コロナ禍の今は、会場での試験も困難ですから、不正行為を防ぐ顔認証システムや多要素認証を導入したIBT(*3)など、在宅で受験できるシステムを検討しています。

厳格な試験と専門性を重視した講義内容は、強みだと思います。学びたいという意思のある学生に向けたきちんとした学問を提供する、リカレント学習であるならば本人が望む結果を出せるようにする、そのための「インターネット配信公開講座」なんです。

*用語解説

1.デジタル認証バッジ
電子証明書のこと。各種証明書・修了証等を紙に代わって電子化し、能力・業績等の証明に利用できる。

2.CBT(ComputerBased Testing)
コンピュータを利用した試験方式。試験結果は終了と同時に確認することができます。

3.IBT(Internet Based Testing)
場所や時間を選ばずインターネット経由で行う試験システム。

動き出した次世代教育

小学校のプログラミング教育に続いて、本学が今注力しているのはデータサイエンスの分野です。

昨年、政府が策定した「AI戦略2019(次頁参照)」に絡んで、未来への基盤づくりの1つとして教育改革が掲げられており、特にデジタル社会の「読み・書き・そろばん」ともいえる「数理・データサイエンス・AI」の基礎をすべての国民が育み、あらゆる分野で人材が活躍することが具体的な目標とされています。

これを受けて、放送大学でも2019年度より、データサイエンスの関連番組をBS231chで開始することとなりました。

政府による具体的目標は、数理、数学、理学部、工学部のみならず、人文系も含むすべての学部の学生が必ず勉強しなければならないというメッセージです。

しかしながら、そうした分野を学べる学部は最近ようやくでき始めたばかりです。教員も足りない状態です。

文部科学省が議論を重ね導き出した方向性によると、まずは50万人の学生に学習をしてもらう計画のようです。

そして、その過程において放送大学も協力していくことになっています。
放送やインターネットという手段があれば、学習者の増加および教育レベルの向上に対して効率的ですし、放送大学は、既にその仕組みを持っているということでしょう。

こうしたことに携われるのは大変喜ばしくもあります。現在既に本学では、データサイエンスに関するたくさんの番組を制作しており、45分の放送番組が50本近くになると思います。

インターネットで公開するのなら、カメラに向かって先生が話しているだけでも成立すると思われがちですが、そこは放送大学独自のクオリティにこだわって、放送番組としてふさわしい品質を保つよう努力しています。

良質な番組を提供することで繰り返し勉強したい人、デジタル認証バッジ(*1)が欲しい人など、あらゆる人々のニーズに応えていきたいと思います。


広がる可能性
インターネット配信公開講座によっては、さまざまな可能性が広がります。将来的には、例えば各地の自治体が主催する社会教育的な講座などにもデジタル認証を出す仕組みなどが可能となります。

全国各地に、大変興味深い講座があるのですが、どうしても地域限定になりがちです。それらを全国どこからでも学べるようになったら素晴らしいと思います。

例えば、本学の和歌山学習センターで開講されている「高野山学」は大変人気の面接授業ですが、そうした授業もあらゆる地域から参加できるようになります。

学習センターは全国にあるので、そうした地方との連携なども進めていけたらと思います。

インターネット配信公開講座によって、学習の壁や地域の壁などのさまざまな垣根がなくなることに期待してください。

公開日 2020-11-18  最終更新日 2021-02-26

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