BSマルチチャンネル放送開始!

No.127号(2019年1月)掲載記事。
BSマルチチャンネル放送開始!

副学長、プロデューサーが語る放送大学の番組にかける想い

昨秋の「BSマルチチャンネル放送」始動とともに、番組の在り方や制作の取り組み方にも新たな風が吹く放送大学。その現場について、岡田光正副学長と番組制作で陣頭指揮をとるプロデューサーに、日々のミッションや知られざる舞台裏についてお話いただきました。
岡田 光正 副学長

岡田 光正 副学長

BS231チャンネルでチャレンジを

昨年の10月から、BS231チャンネルの放送が始まりました。では、231チャンネルは何を放送するか?

來生学長はVision‘17で「二つのチャンネルのうち一つを授業の提供を主目的とするチャンネルとしながら、もう一つのチャンネルを放送大学授業への関心を高め、国民一般の教養の向上にも資するチャンネルとして特徴づけ、学習センター主体の地域情報の発信や、特別番組の充実、広報番組の在り方等について、新たな積極的な工夫を施します」と約束しました。

つまり、これまでの授業番組は232チャンネル、231チャンネルでは授業ではない、別の言い方をすれば大学の単位と関係ない番組にしようということになりました。

これは、人生100年時代を迎え、社会人の多様な学び直し、新たなチャレンジを応援したいとの思いからです。

ということでBSキャンパスex特集、学習センター公開講座セレクション、〝科学〞からの招待状、クロス討論、16番目の授業、スペシャル講演、放送大学アーカイブス・知の扉、全国学習センターめぐり等々、これまでの授業とはかなり異なる番組が始まりました。

でも、誰がこんな番組を企画・提案し、制作するか?みんなタダでも忙しいのに更なる労働強化だ!

しかし、教員の立場からすれば、授業とは違って自分の研究、学問への思い、さらには最先端研究など自由に番組が企画できます。

また、制作スタッフからすれば、授業という制約のない自由な番組制作ができます。ということで、これまで以上に制作部や放送部の職員と教員とが一体となったチャレンジが始まったと言えます。

新たなBS231チャンネルは送り手にとっても、また見る側にとっても新たなチャレンジの一助となることを期待しております。

 

BS231チャンネル

 

Interview 1

BSキャンパスex番組制作 石井 直樹 プロデューサー

石井 直樹 プロデューサー

NHK報道局や地方各局などでディレクター、デスク、プロデューサーを約30年にわたって歴任。2016年、放送大学へ転籍。考査職、編成管理専門職を経て2018年4月より現職。

前職での報道番組制作の経験から考える、告知番組における「伝え方」とは。放送大学ならではの、放送大学流の「伝え方」とは。情報発信の意味や意義を掘り下げる石井プロデューサーの熱意が見えてきます。

“伝える”ことの責任

放送大学に移籍した当初は考査の部署で、番組内容のチェックを担当していました。

事実関係や情報の出所は正しいか、人権を侵害する表現はないか、広告宣伝になっていないか、“日本一”などの絶対的表現の真偽などをチェックして、放送上のリスクを回避させる仕事です。

授業番組は4年から6年も放送されるので、フリップに使われるデータなども、できる限り元の情報をたどり、内容や引用年度なども確認します。放送に間違いは許されないし、情報は一過性ではない。“物事を伝える”という原点に関わる重要なポジションで、よい経験になりました。

報道、広報、告知、似て非なる側面とは

報道は、事実を正確に伝えること、迅速であること。報道特集番組では社会的背景も絡んできますから、新人の頃はよく上司に「現象の面白さだけでなく、そこから何が見えてくるのかを考えろ」と言われました。

問題提起といった側面もあるので、答えは番組の中にはなく、視聴者それぞれに導き出してもらうというメッセージ性が強い分、例えば戦争や原爆、大災害のような重い題材では心情的にも苦労した経験があります。

“伝える”という点では報道と同じですが、広報にはイメージ発信という側面がありますね。

例えば番組PRでは興味をもってもらう演出が大切で、極端に言えば“面白そうだ”と感じてもらえれば良いという部分は、報道とは違うかもしれません。

私の中では、自分が言いたい事を伝えるのが告知で、相手が知りたい事を伝えるのが広報と位置付けています。

今担当している「キャンパスガイド」はマルチチャンネル放送化と同時にスタートした番組で、対象は学外の方です。

いわば、広報の位置づけですね。放送大学のことを知ってもらうために必要なターゲットニーズは何なのかを常に意識しています。

石井 直樹 プロデューサー

「キャンパスガイド」の制作現場で探る今後の展望

キャンパスガイド

放送大学の魅力をどう発信していくかということも意識しています。例えば、科目群履修認証制度「エキスパート」を紹介する際には、国際ボランティア・ガイドを養成するプランもあるので、それを来年の東京オリンピック・パラリンピックに結び付けて発信すればまさにタイムリーですし、興味のある人にヒットすれば情報拡散も期待できるのではと。

他にも「学生課からのお知らせ」のような、職員のメッセージコーナーができないかとか、いろいろ考えている毎日です。

既に始めている内容としては、キャンパスプロファイルという先生を紹介するコーナーがあります。放送授業では伝わらない横顔を知ってもらい、それが入学の動機づけになればと。

また、全国の学習センターやサテライトスペースで開催されている一般向け公開講演会の案内をしたり、とにかく発信していくことが大切です。

そして、それをどうやって見てもらうのか、いかに見てもらうのか。「面白かったよ」という声は頂いているので、告知プラス広報の手法で“伝え方”を模索しつつ、開発していくのが課題です。

Interview 2

放送授業番組制作 榎波 由佳子 プロデューサー

榎波 由佳子 プロデューサー

CS放送・朝日ニュースターにて政治経済討論番組の 制作担当を経て放送大学へ移籍。放送大学では 放送授業番組の制作を担当。

ゲストを迎えての生放送という“待ったなし”の世界から、錚々たる教授陣を先導する世界へ。変わらないモットーは「コミュニケーション」という榎波プロデューサーの、放送授業番組制作に取り組む心意気とは?

一過性と持続性、両極から学んだこと

毎週討論番組を制作していた前職は、時間との闘いでした。一番苦労したのがゲストの選定で、金曜のオンエアなのに水曜に断られて肝を冷やしたこともありましたし、生放送だったので本番中も気が抜けない。スタッフも実質、司会者と二人きりで業務も膨大。

一方、放送大学での放送授業番組制作は年単位のロングスパンでスタッフの役割分担も明確です。

前職と比べていま感じているのは、生放送とは別の厳しさです。放送授業番組は、受講料をいただいて、勉強していただくための放送教材だということ。かつ、最長6年間放送されるので、言葉使いなど配慮するべき点が多くあります。例えば、年代は西暦表現に置き換えていただくとか。加えて、学生さん以外の視聴者もいるため専門用語はかみくだいていただくといった配慮も必要ですね。さらに先生の立場として、放送授業とは作品なんです。

研究成果を映像作品として残せる機会であり、同じ分野の方が見ていて評価をいただくこともあるそうです。一過性の生放送に対して、持続性のある公共放送であり、色々な要素がクロスオーバーしているので丁寧に制作しなければと思っています。

スタジオ収録の意外な舞台裏

来年度解説する「現代日本の政治」の撮影風景

来年度解説する「現代日本の政治」の撮影風景

放送授業番組はコーナーごとにカメラを止めて時間調整をしながら、積み上げて収録するんです。意外に思われるかもしれませんけど、編集はしていないんですよ。

編集していた時代もあったのですが、カットした内容が重要だったり、編集サイドでは判断が難しいんです。カメラを止められなかった時代もあって、その時は43分30秒間、先生は話しっぱなし。

当時を知る先生は、「あの頃は地獄だったよ」と笑ってらっしゃいます。

先生によると、目に見えない学生を相手に講義をするのは精神的に厳しいことだそうで、カメラさんが思わずうなづいたりすると、ホッとするそうです。

犬のイラストを貼って視線を誘導したりという“和ませ作戦”も時には(笑)。アイコンタクトでコミュニケーションをとるみたいな、そんな現場です。

発信力を高める先生とのコミュニケーション

榎波 由佳子 プロデューサー

先生との実際のコミュニケーションはとても重要で、大切にしています。先生だけでなくスタッフも1年で変わっていく現場なので、コミュニケーションづくりは必要不可欠。

特に客員の先生は本業の合間を縫って来てくださるので気を使いますね。一方で、どんなに著名な先生でも指示を出させていただく場面もありますし、ぶつかることもあります。

でも、「ぶつかる」イコール「熱心でいてくださる」のだと。先生の意思は尊重するべきですし、必要のないロケ要請はない訳で、予算が厳しくても何とかやりくりする。

通常なら絶対撮影できない所を紹介できるという醍醐味もあります。そんな画面が学生さん以外の視聴者の目にとまれば、学生獲得のきっかけにもなると思うんですよ。

そういった意味でも、先生方が熱意をもって展開されたいことの実現のために、予算や日程を調整することが私の仕事の根幹だと考えています。

Interview 3

告知番組制作 吉田 直久 プロデューサー

吉田 直久 プロデューサー

N H Kで青少年・こども番組の企画制作を3 0 年 手掛けたのち、NHK放送文化研究所でデジタルコン テンツや最新メディア動向の調査研究。2018年7月 より現職。

テレビがお茶の間を席捲していた時代の手法から近未来のデジタルコンテンツまでのツールを縦軸に、過去と未来を行き来する柔軟な思考を横軸に、“今”ヒットする番組を探りあてる。吉田プロデューサーのメイキング哲学が冴えます。

ソフトは変われど、変わらないマインドがある

放送大学が開学した当時、テレビを通した「遠隔教育」というのはある意味、画期的だったんではないでしょうか。

メディアの発達に伴って(放送大学でも)BSマルチチャンネル化が実現しましたし、2018年12月からは4K・8KのBS放送もスタートしました。

反面、テレビがファーストメディアではなくなった今、デジタルに対するリテラシーがあってもなくても多様性を確保し、全方位にコンテンツを提供しなければいけない。

メディアが大激変している中、逆に新しいコンテンツが作れる可能性もあるでしょうし、そういう分野を構築していくのも放送大学制作部の仕事だと考えています。けれど、どんなメディアでもアクセスのフックになるのはやっぱり興味や関心という、人々のマインドなんです。

これだけは変わらないし、見てもらわないと始まらない。では、どうすれば興味や関心のアンテナに訴えられるのか、見てもらえるのか。

これはコンテンツメイキングの永遠の課題だと思いますね。

コンテンツを活用する創意のスピリッツ

前職で長年携わっていた青少年・こども番組の制作セクションは、ドラマやドキュメンタリー、アニメ、人形劇、歌番組、CGといったテレビ的な演出手法をすべて内包していたので、幅広いコンテンツを身につけることができました。

また、こどもたちの後ろにいる家族も楽しめるような内容開発という命題がありましたので、ターゲットを意識するという点でも私なりにいい経験でプラスになっています。

いま手掛けているBS231の番組制作では、ターゲットは変わりましたが「見てもらわないと始まらない」というベースは同じです。

年代も多様な学生さんがもっている思考回路に届くよう、アカデミックなアプローチから問いを積み立てる。

テーマ設定とわかりやすい構成は必須で、加えてより内容が理解できるように映像表現と字幕情報を工夫したり、映像コンテンツをどう組み合わせ、どう表現すれば響くのかを考えたり。

すべては放送大学に触れてもらうためのきっかけ作りですね。

一方で、作り手と見る側の思いには微妙な温度差があったりするので、学生の皆さんの声も聞きたいし、聞き取りした内容は今後の番組制作に反映したいと考えています。

メイキングのヒントと流儀

個人的に、年表が好きなんです。今年は何があったか、100年前は何があったか。

20年後を予想してみるとか、時空を行ったり来たり。例えば、平成が終わりますよね。

平成とはどういう時代だったのか学術的に迫ったり、平成の正体を探ったりとか。

面白い番組になるような気がしませんか? もう一つ例えば、ゼロがつながる周年企画はブームを生みますよね。

年表を眺めていると俯瞰ができ、論点整理ができる。

それを基にターゲットに合う文脈を考えたり、表現方法を取捨選択したりしてシナリオを作るといったところでしょうか。

画面の向こうにはたくさんの視聴者がいるので、飽きられず、かつ新鮮に感じてもらえるよう新しいエッセンスを取り入れるアイデアも大切です。

冒頭にもお話しましたが、見てもらわないと始まらない。

他局と明確に違うクオリティを持つ番組作りのために、日々トライアンドエラーです。


「小学校プログラミング教育(導入編)(仮)」

石井 直樹プロデューサー

 

少子高齢化や人口減少が深刻化する中、IT技術の活用によるさまざまな問題

解決や新たなビジネスチャンス台頭の可能性を背景に検討されていたプログラミング教育の必修化。

小学校では2020年、中学校では2021年、高等学校では2022年から実施されることが決定しました。文部科学省によると「将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての、プログラミング的思考などを育成するもの」とされています。これを受けて、まずは小学校教員の方を対象に、プログラミングの概要や実際の授業に臨むためのレッスンなどを解説。

文科系出身の教員の方にも短期間で準備いただけるよう、工夫をこらした編成になっています。

小学校プログラミング教育(導入編)(仮)

「博物館資料保存論(’19)」

榎波 由佳子プロデューサー

歴史的にも文化的にも貴重な資料遺産を収蔵し、次世代へ守り伝えていくという重責を担う博物館の知られざるバックヤードにフォーカスした番組です。

全国各地の名立たる博物館や美術館、宮内庁書陵部、正倉院などから多くのご厚意とご協力をいただき、特別にロケを敢行。所蔵品保存のための適正な温度・湿度管理、虫害から分析する所蔵法の開発、回避には限界がある経年劣化対策など、一般には目に触れる機会がない現場に迫りました。高度な技術を要する絵画の修復や公文書の虫食い修復の実際も見どころで、資料保存のために裏方として尽力するスタッフの方々も紹介します。

番組として面白く、興味深く楽しめる構成に、ぜひご期待ください。

 

 

 

 

 

 

「“縄文”を思索する 考古学×哲学×アート」

吉田 直久プロデューサー

今、縄文時代に関心が集まっています。1980年代以降、それまでの縄文時代のイメージを一新するような考古学的発見が続き、日本文化の基層ともいえるこの時代が、これまで考えられた以上に高度で豊かな文化を育んでいたと考えられるようになりました。

番組では、考古学の専門家、哲学者、「土偶女子」の文筆家、そして縄文文化に深い関心を寄せていた芸術家、岡本太郎の研究者を、歴史学者で放送大学図書館長である近藤成一教授が訪ね、さらにはスタジオでの五人による討論を通して、多様な視点から縄文時代が現代の我々に問いかけるメッセージについて考えます。

放送予定は番組表でご確認ください。 https://bangumi.ouj.ac.jp

 

公開日 2021-02-02  最終更新日 2021-03-16

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