【学習センター機関誌から】卒業生答辞

高知学習センター 卒業生代表
池 昭満

鶯の 谷よりいずる声なくは 春来ることを 誰か知らまし

古今和歌集に収められている大江千里の歌です。この春の良き日、私たち卒業生は、放送大学での学びを胸に、谷から出でて里に出ようとしております。

本日は、先生方、職員や学友同窓会の皆様のご臨席の下、このように晴れやかな学位記授与式を催していただきまして、卒業生一同、心から御礼を申し上げます。また、只今は、高知学習センター所長の深見先生および学友同窓会のご来賓から温かいご祝辞を頂戴いたしましたこと、重ねて御礼を申し上げます。

本日、学位記をいただいた私たちは、新型コロナウィルスによる影響をまともに受けて、その学業におきましても、イレギュラーな対処を余儀なくされた学生でございました。私自身、コロナ禍の前は、毎日のように学習センターの図書・視聴学習室を訪れて、持参のタブレットにて放送授業を聴講し、疲れたら学生控室に行って学友の皆様と歓談しておりました。また、面接授業やセミナーの合間の雑談や年2回の貸切バスによる研修会は何よりの楽しみでもありました。それらがコロナ禍により一変し、先生方や学生間のコミュニケーションも大きく制限を受けることになったわけでございます。私自身は、高知学友同窓会の会長を務めておりますが、この会においても、予定していた行事を中止や延期せざるを得ないことが相次ぎ、残念な思いを重ねたものでした。

そうした中、例えば、セミナーや面接授業では、対面での講義こそないものの、先生方は、パソコン画面を通じて、熱心かつ丁寧に私たちをご指導くださいました。また、学習センターの皆様は、学内外での研修会等について、ご配慮と工夫をもって可能な限りの行事を実施してくださいました。

関係者の皆様のこうしたご努力により、私たちを支えていただき、本日の学位取得という晴れがましい日を迎えることができましたこと、心から感謝を申し上げます。

学習センター所長の深見先生は、学ぶことの意義について「真実を見抜く力を培うこと」であると仰いました。大国が流すフェイクニュース、情報操作、反社会集団による詐欺などの犯罪行為が横行する中、幅広い教養と異なる視点から物事を考える力を涵養することがますます大切になっているということであり、まことに示唆に富むご指摘と感じる次第です。そして、私が思うに、それを実現する場としては、開かれた大学であり、自由な学びの機会を得ることが出来る放送大学こそふさわしいと感じる次第でございます。

私は、今回で3回目の放送大学卒業を迎え、4月からはさらに「心理と教育コース」に再入学いたします。そして、今後とも、幅広い学びを続けてまいる所存でございます。私たち、卒業生一同は、再入学する・しないにかかわらず、この学びの心を忘れず、これからも歩み続けたいと考えております。冒頭の歌にあるように、鶯は谷から里に出ようとしています。里に出ても、この放送大学での学びを胸に、時には、谷を振り返りながら、今後の人生を歩んでまいりたいと祈念しております。

最後になりましたが、本日、こうして卒業の日を迎えるまでに支えてくださったすべての方々、家族も含めてすべての方に改めて御礼を申し上げ、また、放送大学の更なるご発展をお祈りして、卒業生代表の答辞とさせていただきます。


高知学習センター機関誌「くじら」120号(令和5年4月発行)より

公開日 2023-06-23  最終更新日 2023-06-23

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