広島学習センター所長 吉村 幸則
令和4年4月から、放送大学広島学習センター長に就任する吉村幸則と申します。幅広い世代や多様な職業の方が学ばれている放送大学の広島学習センターで皆さまとご一緒できることは嬉しく、微力ながら貢献できるように努めていきたいと思っています。
私自身は令和3年度まで広島大学統合生命科学研究科(生物生産学部)に勤めていました。ここで農学分野(畜産学)の教育研究を担当していました。主な研究は、ニワトリの感染防御機能を高めるための、免疫機能の追究です。鶏肉・鶏卵は、食材として多くの人に好まれています。卵肉の生産にはニワトリの能力を十分に発揮させるようにすること、食材としては病原微生物が入っていない安全性を保つようにするが必要で、このためにはニワトリを感染から守って健康に育てることが大事です。体内で微生物を排除する抗菌成分が産生されることや、乳酸菌等のプロバイオティクスや一部のワクチンがこの機能を高める可能性を示しました。この機能を高めるにはどうしたら良いかをさらに考えていきたいと思っています。一方で、趣味は植物を育てる家庭菜園ですが、目的の野菜をうまく育てるのは難しく、雑草・害虫・野鳥との闘いに明け暮れています。
農業は衣食住の資源を生産し、自然環境を保全するなどの重要な機能を持っています。これを科学する上で、応用生命科学、食品化学、農業経営学などのいろいろな細分化された分野がありますが、最終的には全体を見渡すことも必要です。このため農学は総合科学と考えています。農学に限らず、どういった分野でも、研究したことを社会に展開する過程では総合的に見渡した手段や在り方を考えることが大切でしょう。
放送大学では「教養」を教育目的の核にして、多様な科目を多様な授業方法で発信しています。「教養」のとらえ方は難しいところですが、物事を一方向から見るだけでなく、多角的に見て、総合的に判断できる力を養う、その基盤となるのが教養と思っています。放送大学では多様な授業の提供方法で生涯学習を勧めています。時代とともに社会システムが急速に変化しています。これに対応するには、「これまでに理解している、知っているからこれで良い」ではなく、これまでの知識や経験を活かしながら、学び続けることが大切ではないでしょうか。大事なことを多角的に判断できる、そういった教養を継続的に学ぶことができると、私たちが生活するうえでの気持ちも豊かになると思います。
皆さまと一緒に広島学習センターで学ぶことを幸せに思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
広島学習センター機関誌「往還ノート」245号,2022年4月号より
公開日 2022-06-17 最終更新日 2022-11-01