
私は29歳で理学療法士になりましたが、ある日アメリカの臨床現場を見てみたいと思い、単身でロサンゼルスへ渡航しました。
現地の病院に直接交渉をして、実際に臨床現場を見学できたことはとても良い経験でした。
その際、ロサンゼルスの大学にも立ち寄りましたが、広大なキャンパスと自由に入れる数多くの図書館に圧倒され、大学で学んでみたいと思いました。
ところが日本ではフルタイムで働きながら学べる場所が身近になく、そんな時に出会ったのが放送大学でした。
最初に入学したのが生活と福祉コース、仕事に関する単位を取得し二年で卒業しましたが、論文を書きたいという強い思いが湧き上がり、心理と教育コースに再入学し、「リハビリに対する利用者の心理について」の卒論をまとめました。
さらに大学院へ進学し、「ヤングケアラーのカミングアウトについて」の修士論文をまとめました。
放送大学に入学して一番良かったのはこの論文作成でした。
論文作成過程において、問題を解決するための調査研究方法、それらを分析する論理的思考などを学びましたが、それは仕事でも大いに役立ちました。
また、月一回教員から指導を受ける論文ゼミには、同じく論文作成を目指す多くの仲間がいました。仲間の論文テーマも、各々の仕事や生活から発生した大変興味深いテーマばかりで、それらは私が普段関わることのない法律、歴史、保育、労働といった領域のもので、私の見る世界を大きく広げてくれました。
これは放送大学特有の専門性を持った社会人学生の集まりだからできる貴重な経験であり、一人で学んでいたら決して得られなかったことです。私は論文作成を通して大学卒業資格以上の成果を得たと思っています。
今後も機会があれば自身の世界を広げるために、今までとは違う放送大学のコースやプログラムに挑戦したいと考えています。そして、そのような場が身近にあることを大変ありがたく感じています。
プロフィール
大林 譲(おおばやし ゆずる)
2012年4月 放送大学教養学部「生活と福祉コース」入学 (2014年3月卒業)
2014年10月 放送大学教養学部「心理と教育コース」入学 (2017年3月卒業)
2018年4月 放送大学大学院修士課程「生活健康科学プログラム」入学 (2020年3月卒業)
2023年5月 放送大学東京学友同窓会理事
※2025年2月24日発行 文部科学教育通信「私の放送大学」掲載の記事です。