担当講師:廣井 亮一
(立命館大学特任教授・放送大学客員教授)
<推薦者のコメント>玉置 朋子さん(全科履修生)
この講義は本当に面白かったです。司法・犯罪分野は日常から縁遠く、公認心理士を目指していなければきっと受講しなかったと思いますが、心理士を目指していない学生の皆さんも含めて是非多くの方に受講してほしいと思う科目です。
この講義を受けるまで、凶悪で見たくも聞きたくもない犯罪を犯した犯罪者をモンスターだと受け止め、昨今の社会風潮と同じく「処罰感情」「厳罰傾向」を持っていました。でも私自身全くの善良な人間なのかといえば、そんなことはありません。自分の悪い所に落ち込んだりします。
主任講師の廣井先生はエピローグで「人と人との関係によって成り立つ人間は善と悪を包括する存在」だとおっしゃていました。なるほど人には悪い所があって当然で、それを排除するのではなく悪を「悪だ」と理解し、うまく付き合っていくことが大事なのだなと教えられました。そしてつまり犯罪者は、これまでの人生で「関係性」の歪みがあったり、他にも様々な原因で悪の理解とその適切な対処の仕方を知らないということなのだ、と。治療的司法が今後の刑事司法改革で大いに考慮されることを願います。
15回の講義が終わってしまい今は少し寂しいですが貴重な学びの機会をありがとうございました。
<廣井先生からのコメント>
おすすめ科目へのご推薦、ありがとうございます!
私がこの科目を担当するにあたって受講者に伝えたかったことを、推薦者はしっかりと理解をしてコメントをしてくれました。
1点目は、司法・犯罪分野の壁はまだまだ厚く、多くの人は犯罪者や非行少年のことをほとんど知らないため、メディアによる限られた情報であたかもモンスターのようにとらえてしまいます。
この講義を通して、一つひとつの事件の意味と一人ひとりの犯罪者・非行少年を理解することによって、なぜこのような事件を起こしてしまったのか、どうすれば事件を未然に防ぐことができたのか、について冷静に考えてみようということです。
犯罪者・非行少年をただ非難し厳罰で終わらせるのではなく、「司法臨床」のアプローチによって彼らに「真の責任性」を付与し、犯罪で傷つけられた被害者への贖罪につなげるためです。
2点目は、「悪理学」という、私が数千人の非行少年と向き合って獲得した「悪」の意味です。「善」と「悪」は相対的なものであり、「善」は「悪」の反対物ではなく、両方ともが存在するフィールドの一部分であること、「善」が質的、量的、関係的にシステムとしてのバランスを崩したときに「悪」に転じるということです。
したがって、非行少年の更生、非行臨床の実践のポイントは、「悪」を排除するのではなく、総体としての生身の少年に「悪」を位置付けることなのです。そうした関わりによって、彼らは「悪」の意味を知り、「悪い行為」を自らコントロールしながら更生していきます。
司法・犯罪心理学(’20)に引き続いて同科目(’26)を担当する予定ですが、今回のご推薦でさらによい内容にする励みになりました。
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公開日 2024-03-31 最終更新日 2024-04-01