【学習センター機関誌から】大学で歴史学を学ぶということ

九州大学名誉教授  坂上 康俊
(専門:奈良平安時代史)

今、放送大学の教材『古代中世の日本』(現行は『日本の古代中世』)の古代部分を執筆中です。
現行版は佐藤信・佐々木恵介両先生が書いていますが、その改定版ということで2023年度から番組とともに提供される予定です。来年度は番組の収録に追われるでしょう。

大学で歴史学を学ぶとはどういうことか、その一端に触れられるように工夫するつもりです。
具体的には、次の二つのリクツを大事にしたいと思います。一つは、それが実際どうあったのかということを証拠に基づいて決めていくという、その論証のリクツです。
たとえば倭の五王の時代を描くには日本、朝鮮、中国の文献史料(出土文字史料を含む)、そして考古学の成果を組み合わせて考えなければなりません。「こうでありました」という結論ではなく、「こう組み合わせるとこう考えざるをえない」という過程を示すことを大事にしたいと思います。


もう一つのリクツは因果関係の設定です。
歴史には因果関係が網の目のように張りめぐらされていて、因果関係をたどることでモノガタリになります。しかし、「これこれこういう次第なのです」と史料に書いてあるからといって、それをそのまま信じて良いわけではありませんし、実際には史料には因果関係が書いてないことの方が普通です。

現在でも、当事者には分からない背後の事情がいくらでもあるでしょう。しかしモノガタリとして納得していただくには、ある事実(事件や現象)を他の事実と因果関係で結び、歴史の流れを上手に説明する必要があります。
たとえば和銅開珎は平城遷都の2年前に発行されましたが、この二つを必然として結びつけるリクツは組み立てられるのでしょうか。それとも偶然、あるいは機運といった説明に留めるしかないのでしょうか。こうした類の議論を紹介しつつ、政策史として日本古代史を綴ることに努めたいと思います。


唯一気がかりなのは、今まで教科書を使う授業をしたことがない、ということでしょうか。
まあ、教材はそれとして読んでいただき、番組はそれとして楽しんでいただければよろしいかなと。


福岡学習センター・北九州サテライトスペース機関誌「おっしょい」55号より

公開日 2021-12-20  最終更新日 2022-11-08

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