【学習センター機関誌から】臨海生物リアル体験

最上 善広
放送大学東京足立学習センター 所長・特任教授
(専門分野:動物生理学、バイオメカニクス)

 

 

東京足立学習センターが新たに試みた面接授業を紹介します。

生物学に限らず、自然科学では現象を体験し、直接観察することが大事です。
大森貝塚の発見者であり、日本の動物学の基盤を築いた、エドワード・モース(Edward Morse)の名言、「Study nature, Not books」に倣って、生物学をリアルに体験すべく、お茶の水女子大学湾岸生物教育研究所(千葉県館山市)にて、11月4日から6日まで2泊3日の集中実習を行いました。

実習初日は、現地集合の後、研究所の施設や、実験機材使用のガイダンスを受けた後、早速ウニの初期発生を観察しました。
自分たちで採卵、採精を行い、人工授精をした後、数時間に渡る卵割の様子をリアルタイムで観察しました。夕食を挟んで、観察は深夜にまで及びました。

2日目は、磯生物の採集を行いました。あいにく、月齢が半月だったため、潮の引きはあまり大きくはなかったのですが、早朝の干潮にあわせて磯に出ました。
参加者の中には胴長着用が初めての人もいましたが、磯歩きにもすぐに適応して、多くの収穫がありました。特に、ミミイカが2匹も採れたのはちょっとしたサプライズでした。

持ち帰った獲物は、図鑑を参照しながら種の同定をしました。併せて、発生が進んだウニ幼生の形態形成も観察するという、忙しいスケジュールとなりましたが、その合間に実験所で飼育しているナメクジウオを観察するというレアな体験も出来ました。
さらに夕食後に夜間採集を行い、電気刺激で発光乱舞するウミホタルの幻想的なショーも堪能しました。

3日目は、プルテウスに育った幼生や、実験所で生育した後期幼生を観察した後、近くの浜でマイクロプラスチックの回収を行い、人為汚染がミクロレベルで進行していることが体験できました。
最後に、実習のレポートをまとめ、現地解散となりました。

厳しい環境の中、安全に実りのある体験を実現していただいた、お茶の水女子大学湾岸生物教育研究所のスタッフに深く感謝いたします。


 東京足立学習センター機関誌「葦立(あしだち)」第67号(令和5年3月)より

公開日 2023-05-23  最終更新日 2023-05-23

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