【学習センター機関誌から】インターネットとの上手な付き合い方

香川学習センター 客員准教授 ⾦綱 知征

令和元年度に示された、児童生徒一人一台端末化と校内高速大容量通信ネットワークの整備による個別最適化された学びの実現に向けたGIGAスクール構想は、令和3年度に全国の義務教育段階の学校において本格的に始動しました。

内閣府による最新の調査では、小学生の96%、中学生の98%、高校生の99%がインターネット(以下、ネット)を利用していることが示され、子ども達にとってもネット利用が日常であることが伺えました。

ところが、各校で教育のICT化に向けた整備と取組が進められる中、他者への誹謗中傷や仲間外し等のネットいじめへの関与、児童買春や児童ポルノなどの性犯罪被害や暴力犯罪への巻き込まれなど、SNS等に起因する児童生徒のネットトラブル状況は過去5年間継続して増加傾向を示しています。

また一部の学校では、児童生徒による配布端末の不適切な使用実態が明らかになるなど課題も少なくありません。

こうしたネット上でのトラブルの一因と言われるのが、ネットの匿名性です。総務省の調べでは、ネット上の掲示板に「実名で投稿する」と回答した者は僅か1.4%、ブログやSNSサイトでも2.5%に留まり、ネット利用者の多くが匿名で利用することを嗜好していることが示されました。また、その理由として「心ないユーザーからの誹謗中傷等のリスクの回避」が最重要視されていることが報告されています。

一方で、竹内ら(2015)は、ネット上での自他の匿名性に対する強い信念は、個人がもつ道徳性や規範意識を一時的に弱体化あるいは無効化させてしまうという「道徳不活性化」を起こさせ、その結果、加害行為への関与を容易にしてしまうと主張しています。

つまり、「どうせ特定されない(バレるはずがない)」という安易な思い込みを生み出すわけです。しかしながら、ネット上で誹謗中傷発言をした当事者が個人特定されて訴訟を起こされるといった昨今のニュースをみれば、「バレない」「特定されない」が都合の良い思い込みに過ぎないことは明らかです。

匿名性の影響はこれだけではありません。例えば、今日、多くの人達が活用している無料通信アプリを用いたコミュニケーション場面を考えてみましょう。こうしたアプリ上でのチャットは、一般的には自分が会話している相手が誰であるのかは認識しつつ、しかしその本人は目の前にいないという状況です。

こうした状況は視覚的匿名性とよばれ最も低次の匿名状況と言われています。相手の姿が見えないというただそれだけのことですが、影響は決して小さくありません。

相手の表情や仕草、身振り手振りなど、対面状況での会話では当たり前に存在する、いわゆる非言語的情報は、私たちが相手の気持ちや発言の意図を理解する大きな助けになっています。つまり、こうした情報が隠されてしまうと、それまで特段意識せずとも当たり前にできていたはずの、相手の気持ちや意図を推し量り、相手を不快にさせぬよう言葉を選んで、配慮や気遣いをもって相手に応える、ということが急に難しくなってしまうのです。

一方で個人情報の漏洩や誹謗中傷の被害から守ってくれるはずの匿名性ですが、他方では無自覚な他者への攻撃の一因にもなり得るわけです。誰もが、いつでも、どこからでも、自由に接続できる今日のネット社会は、いわば実社会と変わらない公共スペースといっても良いでしょう。

そこでの言動は、多くの第三者に見られ、好き勝手に批評されます。相手の顔が見えないからこそ、尚更、相手への配慮や気遣い、思いやりを忘れずに、安心・安全なネット社会を創っていきたいですね。


香川学習センター機関誌「息吹」第125号(2022年7月発行)

 

公開日 2022-12-16  最終更新日 2022-12-16

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