福岡学習センター所長
久枝 良雄
4月の入学式では話題として新しい科学技術の潮流である、ChatGPTや空飛ぶ車について取り上げましたが、その後の発展も含めてお話しします。
生成AI、ChatGPTは昨年11月に無料で公開されて以来、世界中に広まりました。Microsoft社は最新のChatGPT4を検索に取り込み、さらに5月にはGoogleが新たな生成AIであるBardを一般公開し、競争が激化しています。この進化は驚くべき速度であり、月単位で変化しています。また、日本でもスパコン富岳を用いた和製の対話型AIの開発が始まったとの報道がありました。
ただしその急速な発展には危険性も指摘されており、広島で開催されたG7サミットでは、生成AIのガバナンス強化を目指した国際ルール作りが始まっています。また著作権の問題についても未解決です。このような生成AIは技術的な側面だけでなく、倫理的・法的・社会的な課題(ELSI)にも十分に配慮したルール作りが必要ですが、技術の発展の速度があまりにも速く、ルール作りが後手後手にまわっていることを危惧しています。現在の生成AIも上手に活用すれば、ビジネスにおいても有用なツールになるでしょう。ただし生成AIはしばしば誤りを含み、滑らかな文章で誤魔化すので盲信することは危険です。あくまでも自らのアイデアを練る補助として使用することに大きな利点があると感じます。
もう一つの新しい技術、空飛ぶ車は私たちの移動に革命をもたらす可能性を秘めた新しいタイプの車両です。この空飛ぶ車にも当然AIが搭載されるでしょう。それにより、渋滞や交通事故を減らし、離島や山間部など、従来の車ではアクセスが困難な場所への移動が容易になります。特に離島や山間部の多い九州地方では、このような移動手段が大変便利になると考えられます。
空飛ぶ車の社会実装においても、ELSIの観点が非常に重要です。2025年の大阪・関西万博での実用化が予定されており、すでにベンチャー企業が個人向けの契約を行っているようですが、安全性やコストなどの課題も克服しなければなりません。
未来への飛躍は、新しい技術を積極的に受け入れ、利用することで実現できます。放送大学にて学ぶことができるのは、新しい技術そのものではなく、その技術を支える根幹の知識です。新しい技術の危うい部分を補うために情報の選別や評価を行うことが重要であり、AIに仕事を奪われぬためにも新たな技術や知識を積極的に取り入れ、柔軟に対応する力、倫理や社会を重んじルールやガイドラインを作成する力を身につけてほしいと思います。皆さんの頑張りと成長を心から応援しています。
福岡学習センター・北九州サテライトスペース機関誌「おっしょい」第62号(令和5年7月発行)より一部編集して掲載
公開日 2023-11-24 最終更新日 2023-11-24