【学習センター機関誌から】今どきの子どもは大変・・・




北島 正人
放送大学 秋田学習センター客員教授

「いまや20人に1人」。40歳以上の緑内障の有病率,5%。そう,そう,それも正解。
でも,ここでお話ししようと思っているのは「不登校」のことなんです。
年間30日以上欠席した不登校状態の子どもは,2021年度時点で小学生は77人に1人(1.3%),中学生はまさに20人に1人(5.0%)でした。
この10月に発表された2022年度の報告では,小学生59人に1人(1.7%),中学生17人1人(6.0%)と,たった1年で小中学生あわせて54,000人超の約30万人,22%増と驚愕の値を示しています(「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より)。

直近の1年でもこれほどの急増を示しているのですが,10年単位で見ても,かなりのハイペースです。10年前の2012年度はというと,小学校は323人に1人(0.31%)、中学校は39人に1人(2.56%)でした。つまり,この10年で小学生の不登校は5倍,中学生は2倍にふくれ上がっているのです。
中学生は不登校率の高さが問題ですが,同時に不登校の低年齢化が進んでいることが分かります。
これらの問題は,コロナ禍に喘いだこの3年の影響も大きいけれど,コロナ禍よりもずっと前からすでに子どもたちに生じていた変化と考えた方が良いでしょう。
文科省の学校調査では,小中学校の不登校の最も大きな要因として挙げられるものは「無気力・不安」で,5割を占めます。不登校になるときには本人の無気力や不安が影響するということであって,直接的な原因ということではありません。
2020年度に実施された,不登校を経験した小学6年生・中学2年生を対象とする調査(「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」)では,「最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」(複数回答)は,「先生と合わなかった、先生が怖かったなど先生のこと」,「学校に行こうとするとおなかが痛くなったなど身体の不調」いずれも小中学生ともに3割程度であり,学校調査よりも身体不調や教師の要因が大きくなります。「学校を休んでいる間の気持ち」(複数回答)は,小中学生の7割が「ほっとした・楽な気持ち」の一方で,「勉強の遅れに対する不安」「同級生がどう思っているか不安」は小学生の6割,中学生の7割に見られ,学校を休むことに対する葛藤的な態度が垣間見えます。
「今どきの子どもは甘えている」,「自分たちの時代の方が厳しかった」と捉える大人たちもいますが,子どもたちと彼らを取り巻く環境は大きく変化しており,発達障害や虐待,深刻な貧困,おひとり様文化,学校・学歴メリットの低減など,むしろ今の状況の方が複雑で混沌としています。
もはや学校や地域システムを変えることだけでそれを収拾できる時代にはありません(上記2022年度調査では,小中高および特別支援学校での不登校,いじめの認知件数,暴力行為は過去最多,自殺の問題も深刻で過去2番目の水準にあります)。

今どきの子どもは大変です。
未来を担う子どもたちを支えるために,私たちはさまざまな立場からあらゆる手段を講じて,今できることを精いっぱい提供すべきときだと考えています。


秋田学習センター機関誌「ばっけ」第107号(令和5年10月発行)より掲載

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