私は1997年、選科履修生として放送大学に入学しました。当時私は67歳、その頃にしてはかなり高齢で、大学の学習がいつまで続けられるか判らず、まずは選科生が適切だと考えました。結果的には26年間も選科生のままで、だからこそ放送大学にこんなに長居することができたようなものです。
ただ、学ぶほどに知らないこと、知りたいことも増え続け、好奇心向学心がゆさぶられて、奈良学習センターが居心地のいい学び舎になっていきました。向学心には理由があり、私は旧制女学校最後の卒業ですが、まともに学習できたのは2年余、大半は工場で働かされ軍需工場では危険な目にも会い、空襲で焼けた母校の修復も手伝うなど、卒業証書はもらったものの「女学校は出たけれど」の言葉通り、学力の乏しい世代というコンプレックスを持ち続けることになるのです。
放送大学で何を学ぶかも手探りです。
まずは自分の複雑な身体と心、特に脳には強い関心がありましたが今の生物学は化学の基礎学力がないと理解が難しく、孫の高校の教科書を借りて読むことからスタートしました。
その翌年に履修した「現代生物学」は私に学習への切望を教えてくれました。
遺伝子のあまりにも高度で巧妙なシステムが偶然の変異と淘汰だけでなし得たものなのか、その疑問は私には未だにわかりません。
また仮説だったものが証明されたら拍手したくなるし、ときにはその逆も。わからないこともまだまだ残され、学習を続けたいという気持ちが固まりました。母や夫の介護の折りは無理のないようにと、一学期一科目を原則に両立を図りました。
どちらもうまく成功したときの嬉しさは格別で、それが翌年への原動力にもなりました。母と夫は他界しましたが、私は今も放送大学の学生です。
関連性のある新しい科目だったり、好奇心だけで選んだ宇宙に関する科目が私を虜にしたり、老化の情報にやはり手が出るなど、気の赴くままの科目選択ですが、生涯学習はどれも楽しくて、選択の失敗を感じたことはありません。
おかげさまで、入学時の予想を遥かに超える長期間、これほどまでに楽しくも充実した晩年を送らせていただきましたこと、本当にありがとうございました。
プロフィール
〇公開講座受講歴
奈良先端科学技術大学院大学
平成20~28年継続受講修了
奈良女子大学理学部生物学科 平成13年度修了
近畿大学生物理工学部 平成21年修了
〇趣味
スポーツ 特に、バレーボール・テニス・サッカー
スポーツ観戦 全般
絵画 油絵 若い頃は公募展にも出展
歌唱 特に、カンツォーネ・シャンソン
旅行 特に、ヨーロッパ
※2024年3月11日 発行日 文部科学教育通信「私の放送大学」掲載の記事です。
公開日 2024-04-26 最終更新日 2024-12-06