満田 成紀
放送大学和歌山学習センター 客員教員
和歌山大学 教授
何のおまじない?と思う人が多いかもしれませんが、最近巷で話題のDX(テレビや新聞で目にしますよね)に関する研修会等に参加すると、必ず登場するお題目です。
もちろん各々は英単語で、ちゃんと書くと「Digitization」「Digitalization」「Digital Transformation」となります。流行りのDXがDigital Transformationのことで、その活動を正しく推進するためには、DigitizationやDigitalizationとの違いをきちんと理解しなければならない、ということですね。
と、これだけで「なるほど」と思える人は、なかなかに英語に達者です(パチパチパチ)。私は全くピンときませんでした。
閑話休題。
Transformationが何故Xなのか、というのも必ずネタに使われる話です。英語の「trans-」という接頭辞が、何かモノゴトの間を移動する状況を表わすことから、「横切る」イメージになるようです。その辺が「cross-」と同義とみなせるので、英語圏ではXをあてても不自然ではないのだそうです。
ちなみに、30年近く昔のパソコンPC-98シリーズのキーボードにはXFERキーがありました。何のためのキーか、皆さんもう分かりますよね。場所はもちろんスペースキーの右です。左はNFERキーでしたが、これはどうやらNot XFERのようです(センスが日本っぽい)。
話を戻しましょう。DigitizationとDigitalizationはどちらも日本語では「デジタル化」と表現されることが多いですが、あえて区別するならDigitization=守りのデジタル化、Digitalization=攻めのデジタル化となります。
Digitizationは、これまでアナログで行っていた様々な業務にデジタル技術を導入することで、業務効率を良くしてコストダウンにつなげる活動です。一方、Digitalizationは、デジタル技術を使わないとできない(アナログでは不可能な)仕組みを使って業務を再構築する活動です。業務の再構築によって新たな付加価値を生むことを目指します。
もちろん、DigitizationとDigitalizationのどちらが重要かという話ではなく、現代のビジネスにおいては、どちらのアプローチも正しく活用することが必要と考えられています。
さて、DXについては「デジタル変革」と表現されることが多いようです。ただし、何をもって「変革」と呼ぶのかは、まだ明確な定義はなく、人によって言うことはマチマチです。
ただ、多くの場合、業務のコストダウンや再構築にとどまらず、様々な(攻守双方の)デジタル化を戦略的に連携させて、組織経営の在り方そのものを変えることが求められています。これまでに築いてきた「ウチのやり方」を刷新し、継続的に自らの価値を高めていく(バリューアップする)ような仕掛けを持たないと生き残れない世の中なのかもしれません。
まさしく、放送大学で自らのバリューアップを続ける皆さんのように。
放送大学和歌山学習センターだより(第98号)より
公開日 2023-04-25 最終更新日 2023-04-25