【学習センター機関誌から】時々気になる「〇〇について」

山梨学習センター所長
平山公明

日々の暮らしの中で、いろんな機関からのお知らせやメールの標題に、「〇〇について」と題するものを見かけます。そんな中で気になるものがあります。自治体のお知らせでは、「ワクチン接種予約について」、「献血について」などです。放送大学のお知らせ一覧の、「単位認定試験について」、「試験問題公開ページについて」なども気になります。一方で私好みの標題をお知らせ一覧で探すと、「第2学期面接授業の科目登録申請にあたっての留意事項」、「附属図書館の臨時休館の期間延長について」などです。


気になるものと好みのものと、何が違うのでしょう。大きなテーマに「について」を加えるとどんな内容を伝えたいのかが曖昧になり、標題を読んだ際にとっつきにくさを感じます。大きなテーマには様々な内容を含むため、「について」とまとめざるを得ないという事情もあるのでしょう。好みの方は、内容が具体的なため、題を見た時安心感があります。結局、標題の「について」を「の連絡」に置き換えた時、題として受けとめやすいかどうかでしょう。「単位認定試験の連絡」では,漠然とした感じがあります。重要なことをいろいろ書いてあるので、中身をよく読んで理解してくださいということかもしれませんが、単位認定試験のどういう点を伝えたいのですか、と尋ねたくなります。一方、標題に動詞を加えて何をするかを示すと内容を予測しやすいと感じます。好みの標題の一番目は「留意」、二番目は「延長」があります。動詞を加えることで、何を伝えたいかが分かりやすくなります。


動詞は加えているけれど、最近届いた郵便物にこんなものがありました。「肺炎球菌ワクチン予防接種助成券の送付について」と題して、助成券を同封していました。送り手にとっては助成券を送ったことが大事なのかもしれません。それをどう扱うかは以下の文章をよく読んでください、ということでしょう。一方、受け手には、「何か送ってきたけど、それで何なの?」という気持ちもわきます。「ついて」でまとめると色々なものを包含できるため、発信者としてはこれでもいいのでしょうが、受け手にとっては「送付」は重要ではありません。郵送なので送付したことは明らかです。実際の内容は、助成券を利用して予防接種を受けてほしい、でした。発信者の意図をのぞかせる標題にしませんか(聞き手知らずの呼びかけです)。

「ついて」の話は、学習の成果確認や課題の説明にも関わります。一コマの授業を受けたあと、講師から「この1時間でどういうことを学習しましたか?(講師がこんなことを尋ねることはないでしょうから、自分が自分に理解度を尋ねるとしましょう)」と聞かれたら、どう答えますか?「服従の心理について学びました」という答えで終わったのでは、理解不十分と判断されます。このあとに、何が何をどうする、などの説明がないと、しっかり学んだとは言えません。「ついて」の先が言える学習が望ましいです。また研究課題に関しても「どんなことを調べたいですか?」と聞かれた時に、「山梨県の高齢化について調べたいです」とだけしか答えられないとすると、課題を先に進めることは難しい印象をうけます。具体的な内容を伴う必要があります。

「ついて」という言葉は包容力があり発信者にとっては便利ですが、受け取り手にも配慮して使ってほしいです。学習にあたっては、「ついて」のその先が勝負です。


山梨学習センター機関誌「おいでなって」81号より

公開日 2021-09-17  最終更新日 2022-11-08

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