【学習センター機関誌より】論文発表会

新潟学習センター

5月 22 日(日)に論文発表会を開催しました。
31名が参加し、大原所長の講評と参加者からの質疑応答を含め盛況な発表会となりました。
5名の発表者の中より、2名の論文をご紹介します。

「アナ・マリア・マトゥテ『人形劇』『北西の祭典』『アルタミラ物語』三作品の比較研究~世界は劇場、人生は夢、人はその人生で何を遺すのか~」

2021年度 人文学プログラム修了 川谷 理香

アナ・マリア・マトゥテは内戦後スペインを代表する作家の一人である。
代表作は1952年の『北西の祭典』であると目されている。ここでは、1942年の処女作『人形劇』(実際に出版されたのは1954年)、1961年の『アルタミラ物語』とともに読解と分析を試みた。

第1章では、スペイン内戦によって祖国を離れて亡命した作家たちの作品と、国内に残って執筆を続けた作家であるマトゥテの作品とのあいだにはどのような類似点や差異が生じたのかを、同時代に生き、同じセルバンテス賞を受賞したフランシスコ・アヤラの代表的な作品を取り上げて分析した。

第2章では、『人形劇』の読解と分析を行った。『人形劇』は世界の二重性について書いていることと、マトゥテの作品にはカルデロンの演劇の影響が見られることが浮き彫りになった。

第3章では、『北西の祭典』の読解と分析を行った。
第4章では、『アルタミラ物語』の舞台であるアルタミラという地方の描写を詳細に検証した。
また、全22篇のうち紙幅の許す12篇について読解と分析を行った。

結論では、第3章で明らかとなった作品の舞台背景となっているアルタミラ地方について、アルタミラはスペインの投影であることを確認した。

また、マトゥテがその作品中で社会的に疎外された人々を取り上げることが多いということの含意を読み解いた。今回三作品『人形劇』『北西の祭典』『アルタミラ物語』を続けて読解・分析した結果、次のようなことが明確になった。

すなわち、疎外された登場人物たちとは、フランコ独裁政権によって思想や生活を統制され、不自由な生活を余儀なくされている民衆のことである。

以上が、修士論文の概要であるが、今後は、欧米の研究者の先行研究をも網羅してさらに研究を深めていきたいと考えている。

私はこの2022年の3月で2年間の放送大学修士課程を修了することができました。
大学院修士課程の2年間は、コロナ禍のため全くのリモート授業で、月に1度程度のZoomミーティングでの演習となりました。従いまして、千葉の放送大学本部に実際に行ったのは、修士課程の2次試験の面接の1回のみでした。
面接時にフランス文学の野崎歓先生と英米文学の宮田陽一郎先生とお会いできたことが、直に先生方とお会いした最初で最後でした。
また、新潟学習センターにも出入り制限等がかけられ、きわめて異例の2年間であったと記憶します。
このため、指導教官の野崎先生のみならず、他のゼミ生の方ともPCの画面越しでの会合だったため、実際に会ったという実感のないまま終わってしまいました。
演習は1、2年生合わせて8人内外で、Zoomに馴れるまでは何かと些細なトラブルは誰かしら抱えていました。
しかし、基本的に主催者である野崎先生が一番大変で、あとのゼミ生は招待される側なので先生が送ってきてくださるZoomの招待状をただ待っていればよく、あまり複雑な操作は要りませんでした。
修士論文の執筆に関しては、4月の入学前から構想は立てていたものの、時間に追われて完成度を上げることはできなかったというのが実情です。
放送大学の本部から資料を取り寄せたり、電子ジャーナルで国内の先行研究を網羅する、といったことは、できる限り行いました。しかし、欧米の先行研究の収集が不十分であったのは心残りです。
放送大学の大学院の長所はこのように交通費を全くかけることなく自宅で勉強できるということがあります。学費もリーズナブルで、2年間で所要単位を修得し論文を完成すれば学術修士の学位を得ることができ、とても励みになります。
研究成果のメルクマールとして修士号を取得することをみなさまにもお勧めします


情報社会と高齢者~高齢者を特殊詐欺から守るために~

2021年度 情報コース卒業  小堺 繁男

新潟日報朝刊に掲載される「ストップ特殊詐欺」によると、新潟県内の被害者の半数は80歳代女性で、次いで70歳代男性が多い。この世代の人たちを特殊詐欺から守るにはどうしたらよいか。

本研究は、書籍・論文・新聞記事によった。鈴木大介著『振り込め犯罪結社200億円詐欺市場に生きる人々』、同『奪取「振り込め詐欺」10年史』、NHKスペシャル「職業“詐欺”」取材班『職業〝振り込め詐欺〟』、2018年10月に開催された日弁連の「日本弁護士連合会第61回人権擁護大会シンポジウム第2分科会基調報告書『組織犯罪からの被害回復~特殊詐欺事犯の違法収益を被害者の手に~』を中心に、これに新聞記事、多くの論文を調査した。

「オレオレ詐欺」で始まって20年近く経過すると、次第に手口も巧妙化して、現金ばかりか、キャッシュカードを騙し取り、還付金があると役所を名乗って、金融機関へ走らせてATMから送金させる等、手口が悪質化している。

当初は携帯電話が主であったが、最近は携帯電話と固定電話(IP電話)を、インターネット上のクラウド交換機を経由することによって、被害者に発信元をわからないようにしている。

電話を掛ける事務所(アジト)も日本国内に留まらず、日本人を使って東南アジアへも進出し、情報通信を悪用して日本へ電話をかけさせている。

国は特殊詐欺に対して、法律を改正するが、特殊詐欺犯は、それをすり抜ける方法をすぐに見つけ出して対抗している。

特殊詐欺組織は、綿密に構成されている。最先端の「受け子」「出し子」を逮捕しても、組織の中核には迫れない。道具屋・名簿屋と特殊詐欺を支える組織も充実している。中核である「架け子」や「番頭」が逮捕されることは、ほとんどない。

この情報社会の悪鬼、特殊詐欺集団を壊滅させる方法はあるか。当面は難しいだろうが、全国民の英知を結集し、壊滅に向けて努力しなければならない。


新潟学習センター機関誌「松籟」139号(2022年7月発行)

公開日 2022-12-16  最終更新日 2022-12-16

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