【教員コラム】宇宙に永遠はない?

谷口 義明
教授(自然と環境コース)

エルピーノ 宇宙が無限だなどということがどうしてあり得ましょう?
フィロテオ 宇宙が有限だなどということがどうしてあり得ましょう?
エルピーノ この無限が証明されると思うのですか?
フィロテオ この有限が証明されると思うのですか?
エルピーノ どのような拡がりなのだろう?
フィロテオ どのような縁に囲まれているのだろう?

『無限,宇宙および諸世界について』ジョルダノ・ブルーノ 著,清水純一 訳 岩波文庫,1982年43頁

私の職業は天文学者です。専門分野は銀河天文学と観測的宇宙論。職業柄,宇宙について考える日々が続いています。

このコラムでは天文学というより,数学の話題を取り上げてみたいと思います。数学というよりは「数」の話題です。

天文学者はざっぱくな性格の人が多いので,細かなことは気にしません。例えば,3と7という数があります。天文学者の場合,ある人は3も7も1であると言います。一方,10だという人もいます。つまり,オーダー(桁)で数値を捉えることがよくあります。これは,観測をしても正確な数値がわからないことが多いので,おおまかな予測で数値を記すことで済ませるためです。

私もそんな天文学者なのですが,最近,少し気になる数が出てきました。それはゼロと無限大です。その理由は「オルバースのパラドックス」という有名なパラドックスに興味を持ったためです。

“宇宙は無限に広い→宇宙には星が無限個ある→星が一様に分布していれば,夜空は真昼のように明るくなる”ところが,ご存知のように夜空は暗い。この矛盾が「オルバースのパラドックス」と呼ばれています。実は,この宇宙には夜空を明るくするほどたくさんの星を作るガスがありません。そのため,このパラドックスは回避できます。

しかし,宇宙の大きさが無限か有限かというのは古代ギリシア時代から人類の興味をひいてきた問題です。現在では,宇宙の年齢が138億歳であることがわかっているので,当然大きさも有限であると考えてよいでしょう。

しかし,実際のところ,宇宙には無限大という数があるのか,なんとなく気になるところです。一方,無限大と関連する数がゼロです(数字をゼロで割り算することはできませんが,無限大が頭に浮かびます)。では,宇宙にゼロはあるのか?これも気になる問題になります。

私たちはさまざまな物理法則を獲得してきました。それに関連して万有引力定数,光速など,重要な定数の値も知りました。実はこれらを整理して考えると,私たちの得た物理法則はゼロを取り扱えないのです(プランク・スケールと呼ばれる数値が下限になるため)。

これを深刻に受け止めると,この宇宙にはゼロがないことになります(取り扱えないので)。ゼロがないとすると,それに対応して無限大もこの宇宙には存在しないことになります。そして,時間の世界では,この宇宙に永遠という言葉は存在しないことになります。果たして,真相や如何に?

(この記事は、2022年11月16日に執筆されました。)


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公開日 2023-03-17  最終更新日 2023-10-20

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