2025年度 新任教員のご紹介

自然と環境コース

飯田 圭 いいだ けい

教授

高密度物質の正体やいかに?

東北生まれの関東育ち、学位取得後2度のアメリカ滞在を経て、高知大学に19年在籍。このたび南国土佐をあとにして、千葉にやって参りました。物理学の対象はあまりにも広いですが、まずは基本が大切です。授業等を通じて、学生の皆さんが基本を習得し、応用の道を探るお手伝いができれば幸いです。

さて、物質を際限なく圧縮していきますと、原子の質量の大部分を担う原子核が互いにくっつきあうような状況が考えられます。すると、原子核が球状に近い通常の形状をとらず、棒状や板状、穴があいたような構造をもつだろうと理論的に予測することができます。雪の結晶でもいろいろな形状が知られていますが、その理解には、水蒸気(気体)が氷(固体)に変化する過程が温度に依ることが鍵となります。原子核の場合、原子核を構成する核物質を水と同じような液体とみなすことができ、これらがその周囲にある気体と共存する状況を探ることにより、密度とともに原子核の形状が変わっていく様子を窺い知ることができます。するとどうやら、重たい星の重力崩壊のあとに残る高密度天体、即ち中性子星の内部には妙な形の原子核がありそうです。

さらに面白いことに、二つの中性子星が合体するというとてつもない現象が観測されています。その結果重たい元素がばらまかれ、私たちの身の回りに存在しているのかもしれません。このように、私たちとの関わりにも思いを馳せながら日々研究を続けています。


生活と福祉コース

糸川 昌成 いとかわ まさなり

教授

心はどこまで脳なのだろうか

私は精神科医をやりながら、研究所で脳の研究をしてきました。精神疾患の治療薬には、脳のドーパミンの働きを抑えるものがあります。このことの裏を返せば、ドーパミンの働きが強すぎると精神疾患の症状がでるとも考えられます。また、うつ病の治療薬は脳のセロトニンを増やす作用があるので、セロトニンの働きが下がるとうつ病になると考えることもできます。そうやって、不安はGABA、記憶はアセチルコリン、イライラはノルアドレナリンというように、心の働きは脳の化学変化で説明し尽くせるのではないかと思ったことがありました。

ところがあることに気づきました。脳をどんなに調べても尊厳というタンパク質は見つからないのです。どんなに脳を解析しても自尊心という化学反応は発見できないのです。尊厳とは、目の前にいる人に対して大切に丁寧に接したとき、相手と自分の間に発生する共鳴現象のようなものです。心を込める、心を寄せる、丹精込める、気持ちを汲む。こうしたことを脳だけで表現し尽くすことは難しい。

どうやら脳は心の一部でしかない。心は脳より大きいらしい。つまり、心には精神科の薬が作用する脳でできている部分と、人と人との関係性や共鳴現象でできている部分がある。心はどこまで脳なのだろうか。そんなことを日々考えています。


社会と産業コース

川出 良枝 かわで よしえ

教授

掘り下げたり、比較したり

広い意味での専門は政治学です。モンテスキューやルソーなどフランス18世紀の政治思想史について研究を重ねてきました。最近は、戦争と平和、あるいは世界秩序について思想的・歴史的に考察する仕事へと関心領域を広げています。放送大学・東京都立大学法学部・東京大学法学部を経て、このたび再び放送大学に着任しました。

パリに留学したこともあり、フランスの歴史や政治、フランス文化一般にも関心があります。はじめてパリに行ったとき、シャンデリアの輝くオペラ座でバレエを鑑賞したり、朝市でつるされているウサギにぎょっとしたり、楽しい思い出です。もっとも、アメリカのボストンやイギリスのケンブリッジにそれぞれ約一年滞在したこともあります。この三つの国の間の比較も面白く、さらには、日本や東アジアとの比較などにも挑戦してみたいと思っています。研究対象である国を掘り下げるのも重要ですが、それを比較によって相対化することで、さらに理解が深まるような気がします。

開講予定の科目として、「平和学」や「社会政治理論の基礎」(仮題)などがあり、鋭意教材作成中です。早く皆様とお目にかかりたいと思っております。


心理と教育コース

中島 正雄 なかしま まさお

教授

思春期・青年期の人の成長、カウンセラーの成長とはどのようなものか

わたしは大学生のころは、病院を退院後に行き場所がなかったり、不登校等で家や学校に居場所がなかったりする思春期・青年期の若者が時間を過ごす中間施設(いまのフリースクールとも重なります)で7年ほど生活臨床に携わっていました。その施設では健康を取り戻したり回復したりする人たちに出会いました。思春期・青年期の人の成長とはどのようなものかということに関心をもっていましたが、成長のあり方をありありと見せてもらうことができた体験でした。

その後、社会に出てからは20年ほど、大学の学生相談に携わってきました。目の前の困難なことに取り組み続け、自分を変容させていく方々にたくさん出会いました。ここでも青年期の人の成長というものをすぐ傍で見せてもらいました。

そして、これまでの臨床経験の中で思ってきたことは、変容するのは支援の相手だけではなく、カウンセラー自身もそうであるということでした。そのようなところから、最近ではカウンセラーの成長とはどのようなものかということに関心が拡がってきました。臨床心理学の観点から、思春期・青年期の人の成長とはどのようなものか、カウンセラーの成長とはどのようなものか、ということについて、皆さんとご一緒に考えていければと思っています。

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