新潟学習センター所長 大原 謙一
4月から新潟学習センター所長を務めることになりました大原謙一です。生まれは京都市で,昨年3月まで新潟大学において教育と研究に,新潟大学定年退職後は千葉県柏市にある東京大学宇宙線研究所で研究に,それぞれ携わってきました。専門は宇宙物理学で,特に,一般相対論,中性子星,ブラックホール,重力波などの理論的研究を行っています。最近は,日本の大型重力波観測装置KAGRAプロジェクトで,主に,観測データの蓄積,データ共有,データ解析に関わるソフトウェア開発などを行っています。
IT技術の発達により,多数の情報が満ちあふれている現在,膨大な情報の中から「真実」を導き出す能力が問われています。最近では,新型コロナウイルスのパンデミックの中,いろいろな数値が出てきます。私のこれまでの研究や様々な経験から感じることは,同じデータ,数値を用いても,全く異なった「結論」を導くことは容易にできるということです。どの結論がより真実に近いのかを見極めるためには,多くの知識を持っているだけでなく,柔軟な姿勢で物事を考える力が重要です。「私は文系(理系)人間だから」と言い訳をして,思考停止になってはいけません。文系・理系の垣根は,受験に効率的だからということで築かれたものではないでしょうか。
放送大学は,BS放送とインターネット配信を利用した通信制大学として,様々な学びができるユニークな大学です。私は,ここ3年間,新潟学習センターの面接授業を担当してきましたが,若い人と私と同年配かそれ以上のシニアの方々に参加していただきました。他の公開講座や講演会などでも同様なのですが,特にシニアの方々の元気良さが目に付きます。以前,某公開講座の際に,「普段の大学の授業中に質問がほとんど出ないけれど,ここではたくさん質問していただいて,たいへんうれしい」と話したら,「学生さんは,成績がかかっているから,つまらない質問をしてはいけないと思うけれど,私たちは関係ないから」と言われました。それは,たしかに一理あるかもしれませんが,でも,理解しようとする姿勢があれば,つまらない質問というものはないし,それで成績が悪くなるようなことはないのです。分からないことを分かったふりをすることが問題です。分かったつもりでいても,簡単なひとつの質問をきっかけに,みんなで考えることによって理解が深まるということは少なくありません。とはいっても,質問をするというのは勇気もいるし,簡単なことではないでしょう。面接授業,ゼミ,勉強会などの機会に,質問し議論する力を学び取っていきましょう。
縁あって,放送大学新潟学習センター所長として,私の第二の故郷と言うべき新潟に戻ってくることになりました。この機会に,皆さんの勉学のサポートをするとともに,私自身も皆さんと共に学んでいきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
新潟学習センター機関誌「松籟(しょうらい)」138号 2022年4月号より
公開日 2022-05-18 最終更新日 2022-11-01