【学習センター機関誌から】放送大学で学ぶということ


城戸 茂

放送大学愛媛学習センター客員教員

学習センターの客員教員を務めさせていただいて、3年余りが過ぎました。その中で、最も印象に残っている出来事は、毎回出席させていただいている各学期末の卒業式です。年齢に関係なく、所長から卒業証書を受け取る時の「凛」としたお姿が目に焼き付いています。私は、教育学部附属小学校長を務めさせていただいたことがあり、在任4年間で400名ほどの児童に卒業証書を手渡ししてきました。放送大学の学生と小学生とではずいぶんと年齢差がありますが、「凛」とした姿、そして満足感、達成感に満ちあふれた瞳の輝きは皆、同じです。儀式的行事の一つである卒業式の目的として、「学校生活に有意義な変化や折り目を付け、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるようにすること」と学習指導要領に示されていますが、卒業証書を受け取る時は、正にこの目的が達成される瞬間でもあります。卒業生は皆、こうした節目に、これまでの自らの取組を振り返り、学ぶことや生きることの意義を一段と実感されることだと思います。中でも、通信制のために学習仲間ができにくく、個々の学生の主体性が特に重視される放送大学では、卒業証書を手にした時の感慨はひとしおだと思います。

また、面接授業や公開講演会において、私が担当している心理と教育の講座には、教員や福祉、医療の分野で子供と関わっている方、子育て中の保護者の方や地域住民の一人として子供の教育に関心を持たれている方など様々な方々が参加されています。そして受講目的も、日々の仕事に役立つ知識や技能の習得やキャリアアップを目指している方、教養を身につけることを通して人生をより豊かにされようとしている方など様々だと思います。しかし共通して言えることは、どの人も放送大学での学びを通して、これまで知らなかった知識や技能、様々な文化、様々な人と出会い、そして出会ったものと大なり小なりつながりができるようになるということです。こうしたつながりができる環境に身を置くことは、年齢に関係なく人が成長していく上で欠かせないもので、放送大学に在籍していることの大きな意義がここにあると思います。放送大学で学んでいる皆さんは、こうしたよさを大いに活かして、豊かな学生生活を送っていただきたいと願っています。

私はこれまで、仕事柄、児童生徒や学生、教職員といった教育に関係する人とのかかわりの中で生きてきました。この放送大学に来させていただいてからも基本的には同じですが、学生の皆さんがこれまでとは全く異なります。授業や講演だけでなく「にぎたつカフェ」や懇親会等を通しての、実に様々な人生経験や多様な考え方をお持ちの方々との出会いはとても新鮮です。私の客員教員としての任期も、あと2年足らずとなりました。チャンスを生かし、学生の皆さんから私も学ばさせていただきながら、節目となる任期満了の頃には、卒業生の方々の姿に一歩でも近づけるようにしたいものだと思っています。


愛媛学習センター機関誌「坊ちゃん」第117号(2024年9月発行)より掲載

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